関西電力:空室維持費転嫁 コスト意識欠如、総括原価方式に甘え

2013年06月16日

空き室が目立つ関西電力の社宅。維持コストが電気料金に転嫁されてきた=大阪府内で5月、向畑泰司撮影
空き室が目立つ関西電力の社宅。維持コストが電気料金に転嫁されてきた=大阪府内で5月、向畑泰司撮影

 関西電力(大阪市)が社宅・寮の空き室の維持コストを電気料金に長年にわたって上乗せし、今回の値上げ申請でも消費者転嫁を続けようとしていたことが明らかになった。こうした無駄な経費は、33年ぶりとなる料金値上げの査定で初めて問題視された。長年見過ごされてきた背景として、必要経費を電気料金ですべて回収する「総括原価方式」に依存する電力会社の甘さや監督官庁の監査の形骸化が指摘される。専門家は独立した調査機関の設置を訴えている。【田中謙吉、向畑泰司】

 総括原価方式は、電力会社が電力供給に必要と見積もった年間費用をすべて回収できるように電気料金を設定するシステムで、電気事業法で規定されている。費用には、石油・天然ガスなどの燃料費に加え、従業員の給与や福利厚生費、発電施設の維持・改修費、減価償却費などがある。こうした費用に一定の利益(現在2・9%)を上乗せして電気料金を決めるため、電力会社が赤字になることは絶対にない仕組みだ。安定経営と膨大な設備投資を両立させ、電力の安定供給を容易にするメリットがあるが、コスト削減を促しにくい問題がある。

 「関電経営陣は総括原価方式というシステムにあぐらをかいてきたのではないか」。関電の電気料金値上げ申請を受けて今年1月末、大阪市内で開かれた公聴会で元関電社員の男性が意見陳述した。公聴会では、役員1人当たり年平均4100万円に及ぶ高額報酬などに批判が集まった。

 値上げ申請を審査した経済産業省の有識者会議も今年3月、人件費圧縮を求めたほか、燃料費の見積額が高過ぎると判断し、米国の安価なシェールガスの輸入を前提に費用削減を要求した。こうして計約470億円を減額させ、電気料金の値上げ幅が圧縮された。東京電力や九州電力の値上げ申請に対する審査でも、人件費などが大きく削られており、コスト意識の欠如は電力各社に共通する問題であることが明らかになった。

 大阪府市エネルギー戦略会議会長の植田和弘・京都大大学院教授(環境経済学)は「電気を使わないと生きていけず、電気代は税金のようなもの。しかし、税金は使途をはっきりさせる必要があるのに対し、電気代はそうなっておらず、コスト意識が働かないシステムになっている」と指摘する。

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