政府は14日、成長戦略を閣議決定した。これを受け、法人税減税の具体策を巡る攻防が激しさを増してきた。財務省などは設備投資を増やした企業を対象にした優遇税制など租税特別措置で支援する意向。これに対して経済界は、高止まりする法人実効税率の引き下げも求める。安倍晋三首相が秋に打ち出す成長戦略第2弾の争点になりそうだ。
「法人税を払っていない会社は7割を超えている。税率を下げても全然効果がない」。麻生太郎財務相は14日の閣議後の記者会見で、中小・零細を中心に法人税を払っていない企業が多い現状を指摘、法人実効税率の引き下げ論をけん制した。
日本の法人実効税率は35.64%(東京都の場合)。2014年度末までは東日本大震災からの復興財源に充てる「復興特別法人税」も上乗せされ、足元では約38%と世界的に見ても高い水準にある。シンガポールや韓国など近隣のアジア諸国と比べれば15~20%も高く「国際競争上、不利になる」というのが経済界の主張だ。
ただ法人税率を引き下げても、もともと法人税を払っていない赤字企業には恩恵がない。黒字企業でも「税負担を軽減した分を設備投資や雇用拡大に充てる保証はなく、内部留保に回るなら景気押し上げ効果は見込めない」(財務省幹部)。法人税率の一律下げには数千億~1兆円規模の財源が必要で、財政健全化との両立が難しくなるという懐事情もある。
安倍首相や甘利明経済財政担当相も今のところ、設備投資を増やした企業に対象を絞り込む投資減税を軸に据える考えを示している。その中で浮上している一案が、新規に設備投資をした企業への即時償却。通常は5~10年かけて税務上の経費(損金)として算入する減価償却費を、投資した年度に一括して計上できるようにして税負担を軽くする仕組みだ。初期投資を早めに回収できるようにすることで、政府が掲げた「設備投資額70兆円への回復」の呼び水にする構えだ。
首相官邸の要請を受けて、自民党税制調査会も税制改正の作業を例年より2カ月前倒しして9月に着手する方針。財務省内には「秋に企業向け税制の方針を発表して、今年度から減税を適用できるようにする」(主税局幹部)案もある。
年明けの通常国会に提出する税制改正法案は成立すれば、ふつう来年度から減税が始まる。この減税の開始時期を、方針を発表した秋の時点まで遡ることで、企業の投資を早期に呼び込む。
ただ経済界はあくまで設備投資減税に加えて、法人実効税率の引き下げを求める構えを崩していない。経済同友会の幹部も「法人税を払っている3割弱の企業こそ、激しい国際競争を戦っている」と指摘した。
米倉弘昌会長ら経団連幹部は13日に菅義偉官房長官と会談。菅長官の「投資減税は従来の枠を超えてやりたい」との発言を受け、「日本企業の投資を呼び込むために法人税の引き下げをお願いしたい」と切り返した。経済同友会の長谷川閑史代表幹事も14日の記者会見で、法人実効税率の引き下げは「日本への直接投資を引き付けるためにも重要だ」として、海外からの企業誘致の観点からも不可欠と強調した。
成長戦略は「20年までに外国企業の対日直接投資残高を、現在の2倍の35兆円に拡大」という目標を示した。足元での投資残高は国内総生産(GDP)比で見ると、欧米諸国に大きく後れをとっている。
麻生太郎、安倍晋三、甘利明、長谷川閑史、米倉弘昌、菅義偉
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