2013年6月15日土曜日

板橋区ホタル生態環境館に迫る閉鎖の危機

今回は常温核融合にもナノ銀除染にも関係のない話題です。
ナノ銀による放射線低減現象を発見した阿部宣男博士は、板橋区のホタル生態環境館の館長を務めています。このホタル生態環境館に対して板橋区が廃止の決定をしたと聞いたので調べてみました。なお、本件については、阿部博士本人には取材しておらず、公開情報だけから記事を書いています。

板橋区では行政の施策の評価を毎年行なっているようで、平成24年度の評価結果は以下のページに公開されています。


ホタル生態環境館の廃止の決定を受けたという評価結果は「平成24年度板橋区行政評価結果 付:板橋区行政評価委員会報告書」(このPDFファイル)に載っています。
一覧表を見ると、P.28に「ホタル飼育施設管理運営」という名称で、ホタル生態環境館の評価が載っており、外部評価と二次評価ともに「休廃止」となっています。


この評価の経緯は、「板橋区施策評価表(平成24年度)」(このPDFファイル)に載っています。
ここに書かれている外部評価(行政評価委員会による評価)の内容は以下の通りで、評価として【休廃止】となっています。(引用の改行は引用者によります)
【今後のあり方の視点】 
施設の室内通路等が乱雑な状態で、予告もなく休館となる場合も散見され、公開を前提とした施設の体を成しているとは言い難い。 
ホタルの夕べでは、多数のボランティアや地域住民の協力もあり、かつ施設を評価している区民も多く存在することから、公共施設としての自覚を持ち、早急に改善を進めること。 
また、ホタルの生態に関する研究成果に対しては一定の評価ができるが、そもそも、区として研究のための施設が必要であるか疑問である。 
中長期的な視点に立てば、施設の老朽化や属人的な能力に依存した施設運営がなされていることから、建て替えを契機に廃止を検討されたい。
この指摘を読み解いてみます。1文目は「今後のあり方の視点」であり、休廃止の決定理由が今後の展望の問題にあると示しているようです。2文目は「施設の体を成しているとは言い難い」と運営の問題点を指摘していますが、3文目では「早急な改善を進めること」となっており、この問題点が休廃止の理由ではないと読み取れます。4文目では、「区として研究のための施設が必要であるか疑問」と指摘しています。しかし、ホタル生態環境館は「再び板橋区にホタルを呼び戻し、自然と共生する「エコポリス板橋」の実現」を目的としていて、研究と実践はそのための手段です。そもそも研究を目的とした施設では無いのですから、この指摘は的外れでしょう
要するに、2〜4文目の指摘は休廃止評価の理由ではありません。5文目に指摘された「施設の老朽化や属人的な能力に依存した施設運営がなされている」点だけが理由だと読み取れます。

ところが、5文目の指摘については、既に区側でも課題と認識していて、同じ文書の中で、解決に向けた検討状況を以下のように記述しています。上記の外部評価では、この検討状況に対する言及がありません。解決に向けた検討を無視しての「休廃止」評価は納得できません
4 今後の展開方針、課題・懸案事項
今後の事業運営スキ-ムについて、早急に検討を進める必要がある。
方向性として、これまで区が行ってきた事業を、NPO法人等に引き継げないか検討する。
また、現在のホタル生態環境館は、施設の老朽化が進んでいることから他施設への移転も含めて検討する。
さらに、上記の外部評価を受けて行われた区の二次評価(区の最終評価)の内容は以下の通りで、最終評価はやはり【休廃止】となっています。
施策実現手段としての必要性の観点と、厳しい財政状況及び施設の老朽化に鑑み、廃止の方向を含めた検討を進めること。
開設中にあっては外部評価での指摘を踏まえ、公開施設にふさわしい事業運営に心がけること。
この指摘を読み解いてみます。2文目は、「開設中にあたっては」とある通り、休廃止を決めた理由ではありません。理由は1文目だと考えられます。外部評価との関連付けは明確には示されていませんが、「施策実現手段としての必要性の観点」は外部評価で指摘された「区として研究のための施設が必要であるか疑問」を受けたものだと思います。しかし、これについては既に指摘したように、そもそも研究を目的とする施設ではないので、的外れな指摘でしょう。また、「厳しい財政状況及び施設の老朽化に鑑み」についても、既に指摘したように、区で行なっている検討を無視しての評価であり、休廃止の論拠としては不十分だと思います

行政評価の趣旨に立ち返れば、評価表に記された事務事業の概要(以下)に沿ったものになっているか否かが最も重要な評価観点だと思います。
区民に対し、緑と水辺の再生事業の一環として、環境指標昆虫であるホタルが生息できる環境をつくり、生育過程、成虫の飛翔等の公開を通じ、生きものとのふれあい体験の機会を提供や、ホタルを中心とした生態系や生物多様性の大切さを理解してもらうことで、意識啓発を行い環境意識向上を図る。
この点について、やはり評価表に記載されている「区民意見等の状況(アンケート調査や個別要望等)、類似・関連事業や他自治体との比較など」を読んでみましょう。この文章では、入場者の満足度は非常に高く、他自治体との比較でも貴重な施設との評価を受けています。(赤字は引用者による)
夜間特別公開実施時のアンケート結果では、入場者の43.5%が区内在住者で都内(板橋以外)37%他県19.5%となっている。入場者の91.1%が「大変よかった」と満足度は高く、92.3%がまた次回見たいとの感想を寄せている。他自治体との比較では、全国でも数少ない貴重な施設となっている
また、「有効性の視点による評価(手段の工夫・協働の取り組み)」を読むと、地域住民やボランティアと協働した運営を実践できており、むしろ、地域に支えられた良い運営ができているように思えます。(赤字は引用者による)
近年その機会が失われている生きものとのふれあいや、生態環境、生物多様性の大切さを体験できる施設として有効である。特別公開時などには、地域住民やボランティア等と協働した運営を実践している

この施設の存続/廃止を決めるのは板橋区民の皆様です。板橋区民ではない私が口を挟むのは僭越ですが、ここまで見てきた限りでは、ホタル生態環境館は運営に課題を抱えてはいるものの、入場者や地域の人々に対して満足の行くサービスを提供しているように思えます。採るべき道は廃止ではなく、存続させての運営改善ではないでしょうか?
おそらく、一旦廃止されて、ホタルの生息環境が失われてしまうと、再度の立ち上げは難しくなると想像します。その観点でも廃止の決定には疑問を持ちます。板橋区民の皆様、再度、考えなおされては如何でしょうか。

以上

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