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「引きこもり」するオトナたち
【第1回】 2009年12月17日
著者・コラム紹介バックナンバー
池上正樹 [ジャーナリスト]

高年齢化する「引きこもり」に
追い討ちをかける事業仕分けの罪

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 「ノーベル賞受賞者や、宇宙飛行士も、事業仕分けには大変怒っている。(このまま)黙っていて、弱者の引きこもりやニートはしょうがない、と思われたら大変だ。何かの形で声を上げなければ…」

 12月14日夜、東京・丸の内の三菱ビル内の会議室で開かれた緊急フォーラム。政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)による2010年度予算の「事業仕分け」で、厚労省の就労支援事業である「若者自立塾」が廃止と宣告されたのを受け、塾の関係者や当事者らから、仕分けへの疑問の声が次々に上がる。小さな会場は、そんな200人近い関係者らの熱気で、立錐の余地もなく埋め尽くされた。

事業仕分けで危機を迎える
「引きこもり」支援

 引きこもりなどの無業者に対する国の就労支援事業がいま、危機を迎えている。

 そもそも今回の事業仕分けで、仕分け人から問題とされたのは、「費用対効果」だ。

 若者自立塾は、2005年度からスタートした事業で、教育訓練を受けず、就労することもできないでいる無業者や引きこもりなどを対象に、合宿形式で集団生活を行い、労働体験などを通して就労に結びつけるための施設。仕分けでも指摘されたように、来年度の予算要求は約3億8千万円で、厚労省から事業を委託された日本生産性本部が、さらに実際に施設を運営する民間営利団体(NPO)に委託するという、誤解を招きかねないややこしい仕組みになっている。

 しかも、08年度の入塾者は、全国28か所の施設で、定員の1200人に対し、わずか490人。国が「ニート」と呼ぶ無業者の推計が約64万人と言われる中で、自立塾への参加率は、たった0.1%に過ぎない。若者自立塾の卒塾6か月後の就労率は約55%で、2年前に比べて10%低下したという。さらに、相談から自立までを支援する厚労省の通所型施設「地域若者サポートステーション」が、全国に92か所ある。つまり、「自立塾は、国税を投入するだけの効果が上がっていないのではないか」というわけだ。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

1962年生まれ。大学卒業後、通信社の勤務を経て、フリーに。雑誌やネットメディアなどで、主に「心」や「街」をテーマに執筆。1997年から日本の「ひきこもり」現象を追いかけ始める。東日本大震災後は、被災地に入り、震災と「ひきこもり」の関係を調査。最新刊は『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)。他に『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)、『ふたたび、ここから~東日本大震災、石巻の人たちの50日間~』(ポプラ社)など。


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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