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米大統領から大変な「宿題」を持ち帰った習近平の憂鬱

WEDGE 6月13日(木)10時15分配信

成果を勝ち取ったオバマと「宿題」を持ち帰った習近平

■成果を勝ち取ったオバマと「宿題」を持ち帰った習近平

 そして2日間にわたった会談は、オバマ大統領にとっては比較的満足のいくものとなったと思われる。

 会談後の両国の発表や各メディアの報道などを総合的に見てみると、まずはサイバー攻撃問題に関しては、オバマ大統領は米企業などが被害を受けた具体的な事例を示したうえで、中国側に調査を要求したのに対し、習主席は調査を約束するとともに、共通のルール作りを急ぐことで一致したという。

 そして北朝鮮の核問題については、両首脳とも核保有は受け入れられないことを確認したうえで、北朝鮮への制裁強化など具体的な措置を取ることで合意したと報じられている。また、気候変動問題に関しては、習近平国家主席とオバマ大統領が両国で協力して問題の解決に当たることで合意した模様である。

 このようにして、オバマ大統領は自らの関心順位の高いサイバー攻撃問題と北朝鮮の核問題に関して、習主席からかなり具体性のある約束を取り付けて会談の目的をほぼ達成できた。それに対して、習主席が挙げた会談の成果と言えば、それはすなわち、彼自身が提唱した「新型大国関係の構築」についてアメリカからの賛同を引き出したことである。

 しかし考えてみれば、いわゆる「新型大国関係構築」うんぬんとはあくまでも抽象論のレベルの話であって、アメリカ側にしてはこのような抽象的なスローガンの一つに賛同しても賛同しなくても、別に国益に触るようなことは何もない。言ってみれば、オバマ大統領は当たり障りのない「新型の大国関係構築」に賛同したことで習主席に花を持たせた代わりに、具体的な現実問題の解決に関する協力の約束を中国から取り付けるという「実」を手に入れたのである。

■サイバー攻撃をどう「調査」するのか

 しかし中国の習近平国家主席にとって、オバマ大統領に対するこの一連の約束は実に大変なものである。習主席は大統領との会談を成功させて自分自身と中国のイメージアップを図るために、2日間の会談においてオバマ大統領に迎合するような形で上述の一連の協力の約束を交わして家路に着いたが、帰国後の彼には大変深刻なジレンマが待ち構えているはずである。

 というのも、習主席がオバマ大統領に「協力する」と約束した上述の一連の問題は、中国自身が複雑な事情を抱え、とても解決できそうもない問題なのである。

 たとえばサイバー問題はまさにそれにあたる。米国に対するサイバー攻撃の発生地は当の中国であり、中国人民解放軍がそれに深く関わっていることは周知の通りだ。もし習主席はオバマ大統領との約束に従って、本気でサイバー攻撃に対する「調査」を行おうとするならば、それは結局中国軍に対する「調査」となるのである。

 そして、アメリカとの間でサイバー攻撃を防ぐための「共通ルール」まで作ってしまえば、それはまた、当の人民解放軍に対する締め付けのルールであるに他ならない。そうなると、少なくとも人民解放軍の目から見れば、自分たちの総司令官であるはずの習主席が「アメリカの手先」となって自分たちの首を押さえつけにくるものだから、習主席に対する軍の反発が高まってくることが予想される。軍事委員会主席に就任して日の浅い習主席にとって、それは政治的致命傷となりかねないのである。

 したがって、おそらく習主席は帰国してから、サイバー攻撃に対する「調査」を決して真剣に行わず、何らかの方法でアメリカ側を誤魔化していくことを考えるのであろう。しかしそれでは習主席は当然、オバマ大統領からの信頼を一気に失ってしまい、あの2日間の首脳会談の「輝かしい成果」は完全に台無しになるのである。

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最終更新:6月13日(木)10時15分

WEDGE

 

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