ソウル株式市場で、最高値をうかがっていたサムスン電子株が急降下している。
なにしろ時価総額で、韓国の上場企業全体の20%を占める巨人企業の株価急落に、総合株価指数(KOSPI)もつれて下落。市場は混乱に陥った。
サムスン電子株が急落したのは2013年6月7日。終値で、前日比9万4000ウォン(6.18%)下げて142万7000ウォンだった。下落幅は、2012年8月に米アップルとの知的財産権訴訟で負けたときの7.5%に次ぐ大きさとなった。
きっかけは、この日明らかになった米証券大手のJPモルガンによる投資家向けリポート。朝鮮日報日本語版は 6月10日の社説で、「外資証券のリポートだけで混乱した韓国株」と報じた。
JPモルガンはリポートで、サムスン電子が販売する主力スマートフォンの「ギャラクシーS4」の販売台数が予想を下回るとし、目標株価を当初の201万ウォンから190万ウォンに引き下げ、「今年第3四半期(7‐9月)からは業績が後退局面に入る」と予測した。
2012年のサムスングループ全体の営業利益は39兆ウォンで、このうち携帯電話事業の利益は約半分の19兆ウォンを占める。そのため、「外資系証券会社が一気にサムスン電子株を売り浴びせた」(朝鮮日報)と指摘する。
週明けの10日は2000ウォン(0.1%)安の142万5000ウォンと、少し落ち着いたかにみえたが、翌11日には3万6000ウォン(2.5%)安の138万9000ウォンと、140万ウォンを割ったのは1月28日以来のこと。11日の終値ベースの時価総額は204兆5980億ウォンで、6月4日の終値ベースと比べると、わずか1週間で時価総額が22兆ウォン超も吹き飛んだことになる。
さらに、12日は前日比4000ウォン(0.3%)安の138万5000ウォン。13日は再び下げ幅を広げて、2万8000ウォン(2.02%)安の135万7000ウォンで、5日続落した。
海外投資家の「売り」が続いているようだ。
「外資系証券会社が発表したリポートを無条件で信じる韓国国内の投資家が多いことをあらためて確認された」――。サムスン株の急落を、朝鮮日報はそう報じている。1997年のアジア通貨危機当時も、香港のある証券会社の「韓国から今すぐ引き揚げろ」というリポートが事態を悪化させたとし、今回も「たった1本のリポートで外国人投資家が韓国株を一斉に売ると、韓国内の大口投資家も相次いで売り注文を浴びせた」と、海外投資家がソウル株式市場を「牛耳る」状況を憂いた。
一方、日本経済新聞(2013年6月12日付)は「サムスン株急落、市場が警戒する『成長神話』の陰り」の見出しで、主力の「ギャラクシーS4」の停滞が「サムスン全体の成長鈍化の懸念につながっている」と分析した。
市場で動揺が広がったのは、「アップル株安の残像が投資家のあいだで根強いのが大きい」とみており、利益成長の鈍化懸念や「iPhone5」の売れ行き不振の観測から、2012年後半から失速したアップル株と同様に、「ギャラクシー」シリーズの製品寿命の短期化がサムスンの成長を弱めるとの見方だ。
ただ、野村証券は「スマートフォン事業に対する市場の懸念(サムスン株の急落)は行き過ぎ」とも指摘している。
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