社説
暴言ツイート/復興に関わる資格はない
被災者のために本気で仕事をしようとしていたのか、甚だ疑わしくなる。復興庁で福島県を担当していた水野靖久参事官(45)が、市民団体などに対する暴言を短文投稿サイト「ツイッター」で発信していた。 憂さ晴らしに他人をこき下ろしていたのだろうか。匿名なら何でも言えると思っているなら、いかにも幼稚な振る舞いだ。内容もいささか品がない。更迭や処分は当然のことだろう。 福島第1原発事故で苦しんでいる被災者のためにも、復興のために真剣に仕事をしている多くの公務員のためにも、厳しく対処しなければならない。本気で復興に向き合っているのか、国も問われている。 水野参事官はことし3月、被災者支援の市民団体が開いた集会に出席後、「左翼のクソども」と書き込んだ。卑劣な中傷以外の何物でもない。 「相手の知性の欠除(欠如)に対する哀れみのみ」という書き込みもあった。気に入らない相手を見下し、自己満足に浸っているかのようだ。本当に知性があるなら、こんな言い方は決してしないだろう。 ツイートの矛先は大臣や国会議員にも向けられ、言いたい放題の状況だった。 問題が発覚して福島県支援担当から外された水野参事官はこれまで、原発事故の被災者を対象にした「子ども・被災者支援法」の基本方針策定に関わってきた。 法律は昨年6月に成立し、対象地域の子どもや妊婦の医療費減免などが盛り込まれた。だが、どこが対象地域なのかを定める基本方針がいまだに策定されず、批判が強まっていた。 避難住民らの健康や生活に関わる重要な法律であり、関心はすこぶる高い。 それなのに基本方針が決まらなければ、法律そのものがたなざらし状態になるしかない。原発事故避難者らの意見を聞き、国が策定しなければならないのに、1年たっても実現していないのはまさに怠慢だ。 支援法をめぐって、水野参事官と被災者側との接触はなかったのだろうか。ツイッターであれほどの暴言を吐いているのだから、会議の場でのやりとりがあったのなら、その内容も調べるべきだ。 ただ、基本方針の策定が長引いているのは、決して官僚個人の問題ではないだろう。組織としての復興庁が責任を負わなければならない。 トップの根本匠復興相は14日、同庁のホームページで今回の暴言についてわびながら、「真心を原点に被災地に寄り添いながら」と記した。 根本復興相は福島2区選出の衆院議員であり、地元の苦境は十分に承知しているはずだ。被災地出身の大臣が復興行政を担いながら、支援法の枠組みすら決められないのでは、どこまで本気なのか分からなくなる。 暴言問題をきちんと処理することと、基本方針を早く仕上げることが、被災地に寄り添う当面の政治になるはずだ。
2013年06月15日土曜日
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