2004年4月/ワタミフードサービス 代表取締役社長 渡邉美樹さん
Profile
1959年生まれ。明治大学商学部を卒業後、1年間佐川急便で働き独立資金を貯めて、1984年「つぼ八」の FCオーナーとして起業。1987年にワタミフードサービスに社名変更し、1996年店頭公開、2000年に東証一部上場。居食屋「和民」、ファミリーコミュニティーレストラン「和み亭」、「T.G.I.Friday's」などを展開。外食産業のほか、農業、教育、環境などにも進出。最も成功した起業家のひとりと呼ばれる。
●http://www.watami.co.jp/
Interview
「夢に日付を入れる」という信念が有名ですが。
いつまでにという、具体的な日付を入れることで、はじめて夢は実現に向かものです。そこで重要になってくるのが、大きな目標に対するルーティンワークですね。ものごとのプライオリティをきっちりとつけ、ルーティンワークと組み合わせながら、スケジュールに組み入れていく、というのが僕の考え方。いかに効率的に時間を使うかは、このプライオリティの選別にかかってくると思います。
前提として「夢を持つ」ことが必要ですね。
夢はパスポートです。夢がない人はパスポートを持ってないわけだから、どこにもいけない。確かに今はどんな夢を持っていいのかわからない、という人が多いですよね。それは社会での自分の位置や理想とすべき人物像を知らないから。だから、僕は理事長を務めている郁文館という学校で、社会や目指すべき人物についての講座を持っています。これからは、夢を持たせるための教育が必要です。
夢が事業の多展開につながって、結果的に忙しさが増してくると思いますが。
どんなに忙しくても、その日のことは当日のうちにやりぬくのがポリシーです。僕の場合、朝6時に出社して深夜まで働くことも多く、平均睡眠時間は4時間ですが、きついとは思いませんね。経営者は24時間働くつもりでなくては。
睡眠を上手にとる工夫があるとか?
睡眠は長さではなくて、深さだと思います。佐川急便時代は毎日わずかしか寝ないで働いたので、そのときに効率的な睡眠方法が、身についたんでしょうね。「俺は土になる」と5回いって、本当に5回目には土のように深く眠ってしまいます(笑)。朝も目覚めた瞬間から頭がフル回転してますね。
起きてすぐ、仕事モードになれる秘訣とは?
僕が1日の中で最も大切にしているのは、寝る前の15分です。そこで小学校3年生のときからつけている日記を書いて、1日を完全に清算する。そのあと3分程度、翌日の予定をイメージします。だから、目覚めたときには、今日やるべきことが完全に頭に入っていて、すぐに全力で活動できるわけです。
翌日をイメージする3分が大切なんですね。
そうです。ただし、その前の段階で何度もスケジュールを確認しているからこそ、前日の最終確認が生きてくるんです。僕は一つの行動に対して、1ヵ月前、1週間前と、3、4回は確認していますね。前日はすでに4、5回目になっているので、その時点で予定はもちろん、対処法まですっかり頭に入っています。
人生という時間は有限と気づくと、目標と優先順位の大切さがわかるはず。
予定を組まれるのはご自身ですか?
すべて自分で1分、1秒のムダもないように決めています。僕の予定が決まってから、会社全体や社員の予定が決まっていく流れです。365日24時間をフル稼働しながら、10以上ある法人を効率的にコントロールするには、この方法しかないですね。
予定は手帳で管理しているのですか?
20年くらい同じ手帳を使っています。一つの予定が終わるごとに赤で消すのが、僕流ですね。線を引いても、あとからスケジュールを読むことができるので、赤を使っています。1日に予定が20以上も入っている毎日なので、一つ終わるごとに、敵をやっつけるかのごとく赤で消すんです(笑)。絶対、負けないぞ、とね(笑)。
メモなども、その真っ赤な手帳に(笑)?
メモ類はカードを使います。あとで必要なことを手帳に転記する方法です。持ち歩いているカードには、夢に日付を入れたものもあって、これは1日に何度も見直しますね。ふとした瞬間に「2006年 グループ売上1千億円」という文字を見て、「大丈夫か?」「大丈夫だ」と自分の中で確認するわけです。それが僕の原点です。
1日の予定を見ると、さすがに会議が多いですね。
確かに会議の数は多いですが、それは10を越える法人を抱えているから。たとえば、学校、病院、農業など個別の事業にとっては、たった月1回の会議でしかない。その1回でこの法人を完全に把握して、さらに発展させようという視点だから、ものすごく濃密で有意義な会議です。会議は時間のムダとよくいわれますが、ワタミグループに限っては、決してそんなことはないですね。
会議を有効な時間にするポイントは?
なんのための会議か、そこでなにをしたいのか、それを明確にすることです。参加者には、僕と同じ経営者の視点で会議に参加してもらうから、おもしろくて濃密な時間になっているんだと思います。
とてもタフな印象ですが、そのバイタリティの源は?
ストレスがないことでしょうね。僕はなんでもラッキーと考えるからストレスを感じないんです。落馬して鎖骨を骨折したときでさえ、そうです。頭から落ちていたら間違いなく半身不随だったといわれ、肩でよかった、ラッキーだったと思いましたから。
ポジティブだからストレスがない?
あれも欲しい、これも欲しいと思うから、ストレスがたまるんだと思うんですよ。僕は、社員が明るく仕事をしてくれて、自分も普通に暮らせている今をとても幸せだと感じています。もちろん、もっと店を増やしたいとか、いろいろな夢はあります。ただ、この現実のありがたみも十分わかっているし、だからこそ前向きに考えることもできるんです。
最後に新人が入社する時期ですが、メッセージを。
人生という時間は有限であることに早く気づくことです。学生時代と違って時間の貴重さを実感する中で、優先順位をつけることを覚えてほしい。それは自分の生き方を決めることだと思います。もうひとつは、目標を持つこと。目標を達成するための時間、それこそが人生そのものです。目標を失ったり、減らすようなことだけは、してほしくないですね。どんなに慌しくても、漫然と忙しさに身をゆだねるのではなく、「この1年はこれからの夢のために、仕事を覚える時間として忙殺されよう」という目的意識の中で、日々を過ごしてほしいですね。
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