現代女子論:第3講 韓流 夢中になれる私もステキ
毎日新聞 2013年06月14日 大阪夕刊
韓流スターといえば、ファンと交流するファンミーティング(<4>)が付き物。大阪で開かれたイ・ピルモさんのイベントに参加してみたら、歌、トーク、私物プレゼント抽選会、と盛りだくさんの内容に驚いた。北は北海道、南は沖縄からファン250人が集結。ゲームコーナーでは、くじで選ばれたファンに「お姫様抱っこ」や「おんぶ」、イベント終了後の有料ツーショット撮影会では、どんなポーズのリクエストにも応えてくれる。そのサービス精神には脱帽である。そして何より、肩を抱かれ、カメラの前でポーズを取る女性たちのかわいいこと。その表情はまるで「恋する乙女」なのである。
2泊3日で北海道帯広市から来たパート主婦(56)は「もう死んでもいい」とメロメロ。ピルモさんをドラマで知ってから、パソコン教室に通い、パソコンを習得。ネットでファンミの存在を知り、朝晩パートをしてこの日のためにお金をためたという。「ピルモさんのおかげで世界が広がった」と感謝の日々なのだそう。
揺れる日韓関係はどう影響しているのだろうか? 「文化と政治は分けて考えるべきだ。ピルモさんは昨年8月の最も緊迫した時期にも約束通り、日本に来てくれた。だからこそ、もっと応援しようと思った」と話すのは、岡山市からイベントに参加した主婦(68)。韓流女子には「どこ吹く風」なのである。
彼女たちは、語学習得にも意欲的だ。韓国語を6年間学んでいるという神戸市東灘区の女性会社員(32)の動機はただ一つ、「ビョンホンさんの話していることが知りたくて」。NHKの「テレビでハングル講座」のテキスト発行部数は、ブーム前の2002年の9万部から24万部(12、13年)で安定している。
北原さんは「韓流とは、語学熱とセットになって、経済と文化を動かした、いまだかつてない女のムーブメント」と指摘する。「最近の日韓情勢で、韓流好きを遠慮しながら公言している女性が、イベントに行って、欲求が解放されている時の『私だけじゃない』という安心感が自己肯定につながっている」と分析している。
一生懸命働きグッズを買い、韓国語を覚え、友達を増やし、国境をも軽々飛び越えるパワフルな「恋する乙女たち」。夢中になれる存在を見つけた彼女たちがまぶしく映った。
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■韓流用語の基礎知識
<1>ヨン様〔Yon−sama〕