名古屋グランパスが飛騨古川キャンプで、例年にない取り組みを行っている。ストイコビッチ体制になって初めて、若手選手と年上の主力選手が同部屋になるよう割り振った。選手会長のGK西村弘司(28)の発案によるもの。若手に主力のプロ意識を学ばせ、主力には新鮮な刺激を与えるペアリング。その効果は上々のようだ。
今年の飛騨古川キャンプは、宿舎に帰ってもひと味違う。阿部と本多、増川と牟田など、ポジションを守る主力と奪いに行く若手が同部屋で過ごしているのだ。
これまでは部屋ではリラックスできるようにと、普段から気の合う者同士を組ませていた。このキャンプでもこれまでと同じく、当初はチーム統括部が部屋割りを作成した。そこに刺激的な提案をしたのは選手会長のGK西村だった。
「仲良くなれとかじゃなく、キャンプやし、いろんな話も出てくる。ベテランの普段の行いを見て、若手に対してプラスになれば」
今季のグランパスの年齢構成は23歳以下と28歳以上にはっきり分かれている。どうしてもピッチ内外で年代ごとに分かれがちだった。ヒントは西村の前所属の京都。主力と若手を同部屋にしていた。当時を思い出した西村が、ポジションや年齢を書き出して部屋割りを考えた。
反応は上々だ。若手からは「隼磨さんからすごく学んでます」(佐藤)、「増川さんをいじったら殴られた」(牟田)といった声が。阿部は「本多との会話はゼロです」と笑っていたが、じゃれ合っているところを目撃されている。西村は「オレは言い出しっぺやから、一番面倒みなアカンのをかぶった」と、ブラジル出身のチアゴと異文化交流を楽しんでいる。
部屋割りのアイデアも、残留争いという不本意な現状からの脱却のため。西村は「これがきっかけになると思うほど簡単じゃない」と前置きしつつ、「ささいなことやけど、流れがある」とチーム全体への波及効果を期待した。自身も「あくまで選手会長の仕事は二の次」と、まずはベンチ入りを狙って練習に打ち込んでいる。あえて習慣を崩す。そこに浮上へのヒントがある。 (宮崎厚志)
この記事を印刷する