論ステーション:「慰安婦発言」の中間決算 西川のりおさん/姜朱実さん/徳原昌株さん
毎日新聞 2013年06月14日 大阪朝刊
ノリやパフォーマンスだけで結構、支持者が集まるのが今の政治。橋下さんを支える土壌は根強い。在日の私は選挙権がないから、むしろ政治家の言動も厳しく見てしまう。
元慰安婦の女性2人が面会を拒否したことの重さを考えてほしい。橋下さんの発言が「国益を損なった」「大阪の恥になる」と、イメージダウンばかり指摘されているが、それより傷ついた元慰安婦のことを心配すべきだと思う。政治家は参院選で発言の影響をいかに食い止めるか、利用するか、それしか頭にないのではと感じる。【聞き手・高村洋一】
◇観光に追い打ち懸念−−大阪府旅行業協会理事長・徳原昌株さん
観光業は政治や外交問題の影響をダイレクトに受ける。いろいろな考えがあるのだろうが、橋下さんは影響力が大きい政治家として、口に出してはいけないことを言ってしまった。もっと立場に責任を持ち、慎重に発言してほしかった。
橋下さんの従軍慰安婦発言は、今のところ韓国や中国からの観光客数に影響は出ていない。直近の円安や格安航空会社(LCC)就航などプラス要因もあり、大阪を訪れる韓国人観光客は今年に入り前年比2〜3割ほど増えている。激しい反日感情を抱いているのはごく一部で、大半の韓国人は日本への旅行に抵抗感は少ないように思う。ただ今後、再び橋下さんや他の政治家が批判を浴びるような発言をすれば、観光への影響は避けられないだろう。
一方、中国人は中国政府のプロパガンダ(政治的宣伝)もあり、韓国人よりも反日感情が根強い。尖閣諸島問題以降、大阪に来る中国人観光客はそれ以前の6割減と大きく落ち込んだまま回復していない。慰安婦発言がさらに追い打ちをかけないとも限らないので、非常に心配している。
観光政策では、橋下さんらが旗振り役となって大阪府と大阪市、大阪観光コンベンション協会が一体となり、大阪の魅力を国内外にPRしている活動は評価すべきだ。当協会としても関西の魅力をトータルで提案していく取り組みに協力したい。
具体的には、コンベンション協会から委託を受け、夏の恒例行事「天神祭」の「船渡御(ふなとぎょ)」で唯一、一般客が乗船できる300人乗りの船を運航している。1人3万5000円と高額だが、毎年、満席になる。協会の会員115社の力を合わせれば、全国から観光客を集めることができる。