権利の行使が可能なのだということを納得していただくことは、きわめてむずかしいのだ。
実際に、法的な権利を行使する人は少ない。
それは、法律を知っている場合でも同じである。
POSSEが行った3000人のアンケート調査では、労働法の内容(たとえば、残業代の規定や有給休暇制度など)を具体的に知っている人は若者の5割にのぼったが、労働法を知っている人と知らない人との間で、違法行為に遭う割合(残業代の取得率など)にほとんど変化はなかった。
つまり、法律を「知っているだけ」では、なかなか法律上の権利は実現できないということだ。
また、2008年に若者およそ500人を対象に行った調査では、自分が違法行為を経験していると自覚している者が5割(違法かどうかわからない者もいるだろう)。しかし、その違法行為に対して「何もしなかった」若者は7割以上に及んだ。
そして、「何もしなかった」理由を掘り下げて質問した結果、最大の理由は「はなから解決できるとは思っていない」からだった。
若者は、法律を行使する前からあきらめてしまっている。
それだけ、日本で法律を使うには高いハードルがあるのである。
適法にやるより違法のほうが得
端的に言って、法律などの制度は「使わないと損をするだけ」だ。
たとえば、もし不当な解雇をされたとしても、それが不当であることを争わなければ、権利は何も実現できない。解雇する側としては、「やり得」になるだけである。
もし車で当て逃げされたとしても、訴えなければ何も戻ってこないのといっしょだろう。
会社の側はそれをよく知っている。
ある法務雑誌での経営者側に立つ弁護士の発言が、そのことを見事に言い当てている。
「実際問題、たとえば100人解雇したとして、いったい何人が訴えるか。
1人か2人は労基署に駆け込んだり訴訟を提起したりするかもしれませんが、そんなに訴える人はいないものです。
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