労働法は道路交通法と同じくらい守られていない
そういう労働者側の「無知」を知ってか、企業は法律を破りまくっている。
じつは労働法を突き詰めていくと、意外なことも違法になる。たとえば、サービス残業代が支払われないのは違法であるが、それは1分単位まで支払われる必要がある。
また、準備のために早く出勤しなければならない場合や、仕事のノルマをこなすための「自主的」残業も、残業代支払いの義務がある。
業務命令をこなすための時間は、およそすべて労働時間なのだ。
つぎに、残業代と並んで紛争になりやすいのが、解雇がらみの問題だろう。
よくあるのは、「退職してほしいと言われているが、退職するしかないのか」という相談。実際には、退職を求められても、退職する必要はない。それでも辞めさせようという場合には、「退職」ではなく「解雇」になる。
解雇には、労働者の労働能力に問題がある場合(普通解雇)と、会社の経営が厳しいときの整理解雇とがあるが、裁判例(判例)では、ラジオ放送のアナウンサーが2回放送に遅刻して解雇されても、その解雇が不当だと判断したケースがある。能力不足で解雇できるというからには、育成の可能性がまったくないというほどの状況が求められるのだ。
それは、「今だめだ」ということにとどまらず、「将来もだめだ」ということまで、証明しなければならないことを意味する。
また、整理解雇の場合には、会社全体が赤字であることが求められる。さらには、単年度では人件費がかさんでいるように見えても、会社全体に資産があったり、長期的には人件費の削減や収入増加の取り組みが可能なときは、解雇が認められない。
このように、解雇には強い規制があるにもかかわらず、実際の職場では、「仕事が遅いから」とか「態度が悪いから」といった単純な理由で簡単に解雇される。労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎氏の『日本の雇用終了』という本では、「相性が悪いから解雇」「(店長が他の社員を)俺的にだめだから解雇」という事例まで出てくる。
もちろん、それらは違法である。
こうして見ると、多くの企業は、賃金の支払いや解雇で「違法」なことをしている。
それでも、労働相談に来るほとんどの方は、「自分が悪いのではないか」とか、「うちの業界では仕方ないことなのではないか」とばかり言う。
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