日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか? 著者:今野晴貴 はじめに どうすれば、日本の苛酷な「労働」を変えられるのか?

2013年06月13日(木)
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 だから、ブラック企業をなくすためには、ちょっと政策をいじくればよいという話ではない。規制緩和をすればぜんぶうまくいく、などという単純な話でもないし、逆に、なんでもいいから規制を強めればよい、という話でもない。

 もちろん、「あそこはブラック企業だ!」と個別の企業をやり玉にあげるだけでも、問題はまったく解決しない。

「労働」を変えるためには、今までの日本社会が「労働」を通じてどう形成されてきたか、まずはそのことを知らなければいけないだろう。

「政治が悪い」「政策が悪い」「企業が悪い」と悪役を探すだけではなく、私たちはどう「労働」と向き合ってきたのか、そして、これからどう向き合っていくことができるのか。

 そういったことを、本書では、私たち「個人」の目線から考えていきたいと思う。

 ひとつだけ先に言っておきたいのは、

「労働」のあり方は、変えることができる

 ということだ。

 無理がある日本の労働も、私たちのこれからの行為や選択によって、塗り替えていくことができる。「耐えるか、辞めるか」ではなく「変える」という新しい方向へ、舵を切っていきたい。

 その可能性をも、本書では提示していきたいと思う。

本書の構成

 本書では、労働相談の実態に加え、経済学、政治学、社会学、法律学のエッセンスを用いて、「労働」に関する考察を行っている。

 新書という書物の性格ゆえに、議論の正確さをあえて犠牲にしている部分もあることを、あらかじめ注記しておきたい。

 第1章と第2章では、個人が労働問題に向き合うとき、どのように物事が決まるのか、その過程を述べる。

 つまり、現場レベルで違法・合法はどう決まるのか? を見ていく。

 法律の教科書にも、労使関係の教科書にも書かれていない、個人が会社と向き合うときの「生の現実」から分析を出発しよう。

 続く第3章では、個人が会社と向き合うことで、「社会」にどのような影響を与えるのか、個人から社会へと続く、私たちの可能性を示す。

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