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またも沢山の感想を頂きました。
感想への返事はいくらか遅れるかもしれませんが全部お返ししようと思っておりますのでよろしくお願いします。

それでは、どうぞ^^
一章 ツィーゲ立志編
目を閉じては歩くのは危険
「私はアクアだ」

「エリス」

二人揃ってスポーツ飲料だ、とは続かなかった。

久しく飲んでないなぁ。部活の後にるのが最高だった。

突っ込みどころ満載だった森鬼AとBは名前まで面白でしたとさ。

森鬼の長老さん達から解放された僕は客人として一室を与えられた。中々良い部屋を宛がわれたことや歓迎の宴を開いてくれるなど、ひとまずは良い関係を築けている模様。

かなり端折った上に多少の嘘を混ぜることになったので少々心苦しいけれど、蜃をぶん殴ったとかベース壊しちゃったとか言えないので仕方ない。うん、仕方ない。

部屋まで案内してくれた彼女らは何故だか自己紹介して部屋から出て行こうとしない。もう出て行ってくれて問題ないのだけど。むしろ出て行って欲しい。

一部屋に四人居て男が僕一人なんて……いやいや。

……だって相手するの疲れそうなんだよ。

人の言うことをあんまり聞かないのは先の戦闘で証明されてる。もうちょっと話聞いてくれてもいいんじゃないの?

弓矢装備の乱暴な方、アクアさんはすぐ手が出そうで嫌だし。

短杖装備の不思議さん、エリスさんは電波な雰囲気がぷんぷんする。

メイドなお姉さま探しは今回完全に失敗である。見た目はエキゾチックというか良かったのに。高身長なアクアさんに対して小学生並の低身長のエリスさん。見事な凸凹コンビなのも面白いと思えたのに。

残念だけどこの二人は異常に僕の精神を疲弊させる予感がするのでこの村限りのお付き合いにしたい。うちにはもうトリックスターな女の子は間に合ってます。

それに僕の魔力の肥大化もあって、契約する相手を探すのにも一苦労だ。前二人が大分ごつい相手だったので、それでようやくとか言われると気軽な相手はいなさそう。

巴の推論を検証する為にも双方の了解ありでなら誰かと契約したい気分ではあるんですが。

ただ移住させるだけなら契約云々は関係ないけど、この二人はなあ。

森の管理者がどうのって、要は林業一族ってことだろうから種族的には有用なんだけど……。悩む。

「そう。アクエさんにリアスさんね。案内ありがとう、もう行っていいわよ」

澪さんはこれを狙って言ってない所が恐ろしい。

大体僕の記憶を見て尚、若様の国に行ってみたい、と口にする始末。普通その段階で異世界って言葉に思い至らないモノだろうか。それともあまりに突拍子が無いから、巴の様に記憶の全てを見ないと世界間移動という結論など出ないのか。

澪お気に入りのヤツには銃とか出てくるんだけどな。この世界の事も少しはわかってきたけど銃って概念は無かった筈。

僕でもわかることだけど、この世界で銃の発明はないだろう。魔法を利用した似た武器なら出る可能性はあるけどね。それだけ魔法全盛の世界だ。しかも大なり小なり魔力を扱える人がほとんどだから魔法の恩恵を誰しもが受けることが出来る。

一切魔力を介さない銃器は生まれる土壌が無い。

必要性も薄いしな。

ゲームで例えるのならこの世界は弱い攻撃はダメージ1も与えられない世界だ。どんな弱い攻撃でもダメージ1は通る世界ではない。さらに言えばクリティカルヒットで防御力無視ということも無い。

一定以上の防御力を持つ相手には魔力を帯びない攻撃は無効化されてしまうと言っても過言ではない。手で持つ武器なら内在魔力が武器にも通うのでその原理も外れるけど銃弾ではそれも適わない。

一時でも手に持つ弓矢なら剣や槍には劣るけど魔力はこもるようだけど。

時速何百キロで鉄球を飛ばそうと下位の亜竜にさえ傷一つつけられないがレベル150くらいの近接戦闘職が、例えば鉄製の剣であっても、攻撃すれば鱗を裂ける。物理的な攻撃力だけで考えれば鉄球の方が強いだろうに。

流石に魔力の入りが悪い金属での攻撃には限界があるようで、上位の竜に鉄とかで攻撃するのは無理があるみたいだけどね。例えです、例え。

だから銃はここでは弱い者を殺す武器にしかならないのだ。

ま、概念さえ無いんだ。僕以外の勇者二人だって馬鹿じゃないだろうから銃(の概念)なんて持ち込みはしないだろう。戦争での殺戮の規模が大きくなるだけなんだし。

この世界での火薬の立場は発展することなく終わるさ。火薬で出来ることは大概が魔法で出来るんだ。

「いや、お客人に今後の予定を聞きたい」

「私達に付き合え?」

鬱陶しい、な。はぁ、どうも怒りっぽくなってる気がする。

「生憎と若様も私も忙しいのです。下がってもらいたいのですけど?」

澪、ナイスだ。厄介事の匂いしかしない。

「我らの師に紹介したいだけなんだが」

「武器を壊した侘びに付き合う、では?」

こいつらの師か。……うん、絶対に会いたくない。合体したキャラだったら胃が持たない。人の言うこと聞かない攻撃的なアクティブ電波。契約前の澪くらいヤだ。

「悪いんだけど、君達の相手をして疲れちゃってね。食事まで休ませてもらいたいんだ。長老さんもその為に部屋を貸してくれたんだし」

二人の非礼のお詫びと、今夜宴を開くのでそれまでの体休めにいうことで部屋を貸された。というか押し付けられた。

何か宴会の時にでも聞き出したいことでもあるのだろうか。何の宴会か知らないが僕らも参加できるんだからお祭りみたいなもの?

間が良かったんだな。ツイてる。

「疲れた?お前が?笑わせないで欲しい」

「お茶の子さいさい」

や、やっぱりこの二人はきついな。相手したくない。でもこのやり取り、僕以上に沸点が低い人がいるからどうしたもんか。また片言の澪が出てくるのは痛い。治療は受けたけどまた流血するのは御免被る。

「失礼」

何とか部屋の入り口に居座る森鬼ズの強引なお誘いを断る方法を模索していた僕の耳に新たなる人物の声。

涼やかな、それでいて落ち着きある低音の響き。イケメンは死ぬと良い。

顔を確認してやろうと声の主を探すと、ABの後方に病的な肌の白さの青年がいた。森鬼の長老さん方も見た目だけは若かったから本当に青年なのかどうかは不明。

肌の色以外の身体的特徴はこの村の他の連中と同じなんだけど……なんだろう、少し引っかかる。ざらっとした不愉快な感じがある。何か魔法でも使ってるのか?

何より、気配を消して近づいてきたことが気に食わない。

「貴方は?」

ABに道をあけさせて前に出てきた男に先制の言葉を掛ける。二人よりも上の役職にいるのか彼女らから文句は出ない。だが彼に対する気配はあまり穏やかでもない。敵意に近い無視、とでも言おうか。

「これは、重ね重ね失礼致しました。私、アドノウと申します。長老の一人の身内、有体に言いますと息子でして。勤め先から帰省中の身です」

「それはどうもご丁寧に。ライドウと申します。こちらは供の澪。長老の親族の方に部屋までご足労頂くなど恐縮です。失礼ですがアドノウ様はどこかお加減が?よろしければ疲労に効く栄養薬をご都合しますが」

丁寧に、親切に。でも商人として振舞う。相手の目的が不明な以上、亜空の主としてよりも偶然に村を訪れた商人として振舞うのが正解に思えた。次から次へといい加減疲れるけどな。

役割を作って演じれば年相応の経験不足も、外見の幼さも少しは隠せる。仮面をしていても全体の雰囲気で僕が若いことはどうしても知られてしまうから。外したら今度は商人という役柄の仮面をふかーく被らないと嘗められそうだ。

「え?ああ、この肌の色ですか。これは生まれつきでして体の調子は万全ですよ。そうですか、商人の方。父もそう申しておりました。腕が立つとの話を聞きましたので、すっかり冒険者の方と決めてかかっておりましたよ、ははは」

「冒険者ギルドにも属しているのですがこちらは格好だけで、私は新米商人です。商会も立ち上げたばかりでして。クズノハ商会、と申します。どうぞよろしく」

「この辺り、人の町で商人ギルドがあると言うとベースではありませんね。ツィーゲからいらしたのですか」

なんだ、こいつ。その辺りはもう全部、先程円卓のある集会所で話したはずなのに。面倒な。

「ええ、そうです。ツィーゲから参りました」

魔法で嘘を探している、とか?このざらついた感覚の正体は未だ不明だしこの男の嘘っぽい笑顔も気に障る。嘘っぽい顔は多分こちらもしているだろうけどね。

くそ、澪が黙ってるってだけで何となくイヤな感じなのに。

「なるほどなるほど。どうやら私の杞憂のようですね。失礼、夕刻には宴の準備も整います。所用がありますので私は参加できませんがどうぞ楽しまれて下さい」

軽く会釈すると男、アドノウは踵を返して廊下を歩いていった。足音も無く。

油断は出来ない相手、かな。でも宴で会わないなら、当面の危機ではない、と思う。何かしてくるなら迎撃してやればいいんだ。

「アドノウ殿、以前はあれほど不気味ではなかった」

「アドノウは変」

「あの、そろそろ本当に消えて頂けません?打ち合わせもありますの」

澪がかなーりイラついたご様子でアクエリアスコンビに刺々しい言葉をかける。こいつらがいたら亜空に飛ぶこともできないんだから気持ちは僕も同じだ。

少し、一人になりたいんだけど。

「やはり師匠に会ってもらうことにする」

「大丈夫、痛いのは初めだけ」

こいつら人の感情がわからないのかね。いい加減……

バキィィ!

「っ!」

澪にABへの警戒をさせたまま、僕が背後の音に反応する。

破壊音だ。

というか、部屋の木壁がぶっ壊れている。窓の無い面だったので風通しが大分、じゃなくて。

億劫だったから界も使わずに相手をしていたのがまずかったか?気付かなかったな。

「よー!お前らが客人か!?」

外道”人の言うこと聞かない攻撃的なアクティブ電波”が一体でた。

師弟ともに駄目な子揃いかあ。

何故か確信できる。こいつが師匠だろ。

「アクアとエリスを子供扱いなんだって?大したもんじゃねえか、おい、そこの兄ちゃん握手だ!握手しようぜ!」

『師匠!』

ほら二人の反応もばっちり。だけど、握手、のくだりで二人に緊張感が生まれたな。まさか超握力か!?いたたたた!ってなるのか!?

だが握手くらいなら、まあ我慢か。

会っちゃった以上、この手の変態な輩は引いてくれないに違いない。さっさと済ませてお帰り頂こう。

だって窓でもない客室の壁破壊して乱入して「よー」じゃないって。うちの澪がまたレイプ目だすだろう?

むぎゅ。

う、あれ。いたたたたってならんぞ。

むぎゅむぎゅ。

もしもしキモいです、おっさん。

真面目な顔してオールバックの強面が男の手握りこんでいる。

……はっ!まさか、ソッチの人か!?駄目だ、これは緊急回避を要する!知的好奇心の限界を超える事態である!

「ほう…」

ゾワ。

お、悪寒が!

「は、離してもらえます?」

僕の方の手は既に力が入ってない。あまりの恐怖に脱力中だ。

「これはまた…」

ゾワゾワ。

固唾を呑むAB及び澪。すごく微妙な空気が僕らの間に流れている。

「久々に、良い」

ゾワゾワゾワ!

ブチッ!

「離せって、え、ブチッて何?」

「天誅!!!!!!」

僕が我慢の限界を迎えて手刀で握手してるヤツの手首を叩き接触を断った瞬間。

なにやら血管の切れる音が聞こえたかと思うと烈風が舞い起こり、変態の姿が消えた。

お?

僕の左側には興奮気味の澪が肩で息を上下させながらプルプルしている。

天誅ってこいつが言ったのか。片手に扇を持っている。

あぁ!それで変態を張り倒したのか!姿が見えないという事は、ヤツは自分の壊した壁から退室したわけだな。吹っ飛んで。

生きてるかな。いや生きてるな。ああいうのは楽には倒せないものだ。

『し、師匠~!』

ABは僕より少し遅れて状況を判断したのか、再び声をハモらせて師匠と同じく壁から彼の後を追って出て行った。

「わ」

「わ?」

「私だって若様とそんなにくっついていたことはありませんのに!あの無頼!32秒も若様と!」

こわっ!

お前も十分怖い!

ガチムチ型のホモ疑惑と食欲旺盛なヤンデレか。

すさまじい二択だな。これがエロゲなら僕は例え平積みしまくった話題作でも手を伸ばさない自信がある。

とりあえず何も考えたくなくなった。

宴までは大人しく寝るとしよう。正気の回復には睡眠が必要です。熟睡できる自信はないけど寝よう。








~???~

何とも理解しがたい存在を見つけた。

我に疑念を持っている。おそらく、間違いあるまい。

この希少な種族の中に入り込んでしばらくが経ったが、あのような存在は初めて見た。

二人とも、ただのヒューマンでは無い。

もしや我の追い求める存在、であろうか。よもやそんなことはないと思うが。

なればもう何者への義理も無く動く。本懐に近づく事こそが最優先だ。

この面白い力が通じぬ可能性も出てきた。本体として相手をせねばならぬか。

連絡はどうするか。

邪魔が入っては面白くない。決まっている。

そうとも。

……いらぬな、元々あの女とは対等の協力関係に過ぎない。いや利用しているだけ、とさえ言える。

真相はどうあれ、我はアレらに興味がでてきた。是非実験材料に欲しい。

森鬼の能力についてはわかったのだし。もうここに用は無い。少なくとも我には不要のものだった。

我は永きをかけてようやくかの存在に至る糸口を見つけたかも知れぬ。

宴の後。

早速頂くとしよう。

仮面の少年と黒い女。

我と遭ったが不運であったな。
さて、銃の話が出てきました。
帝国はとても残念です。展開を考えるとどうしても。
超ifとか書いてもそんなの救いでも何でもないし。

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