事実上、空文化されているとはいえ、必要のない条文はない方がよい。あれば、混乱を招くからだ。この点について、長妻昭衆議院議員(民主党)は、質疑で、
「生活保護は最後のセーフティネットで、ほころびがあると死が待っている」
と前置きし、厚生労働省社会・援護局 村木厚子局長・内閣法制局 山本庸幸長官に対し、それらの項目が含められた経緯についての答弁を求めた。
村木氏・山本氏によれば、厚生労働省は、内閣法制局に対し「技術的アドバイス」を求めた。厚生労働省では、今回の生活保護法改正案の策定にあたって、福祉事務所の調査権限を強化する方針としていた(第28条・第29条)。内閣法制局は、
「担当者は、調査すべき対象事項について、(情報を)申請者から求めることが望ましい」
とアドバイスした。この内容が、改正案の第24条となった。
長妻議員は、
「生活保護法という機微に触れる制度に関して、申請にあたって必要な書類やその中身が条文に書き込まれ、世の中に不安・不信が広がっている」
と指摘した。村木局長は、
「運用は変えない」
と答弁した。さらに長妻議員は、
「運用を変えないのなら、削除して今と同じ扱いにしては? どうしても書面の中身も規定する必要がありますか?」
と、「水際作戦の法制化」に関する懸念について食い下がったが、最後に答弁した田村厚労相は、
「運用はなんら変わりません、心配されているような形にはならないし、させません。そのように徹底します」
と繰り返し、第24条を削除できない理由については
「(既に)国会に提出したから、提出したもののなかで国会で議論してほしい」
とした。
では、この「望ましい」という理由によって含められた改正案第24条が、懸念されているとおり「水際作戦の法制化」に用いられたら、どのような問題が発生するだろうか? 含める利益と含めない損失を比較したとき、結果はどのようになるだろうか?