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生活保護のリアル みわよしこ
【政策ウォッチ編・第28回】 2013年6月14日
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みわよしこ [フリーランス・ライター]

生活保護法改正案は「水際作戦の法制化」!?
衆議院・厚生労働委員会での攻防(上)
――政策ウォッチ編・第28回

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懸念される「水際作戦の法制化」について、該当条文の削除を繰り返し求める長妻昭氏(衆議院インターネットTVよりキャプチャ)

 事実上、空文化されているとはいえ、必要のない条文はない方がよい。あれば、混乱を招くからだ。この点について、長妻昭衆議院議員(民主党)は、質疑で、

 「生活保護は最後のセーフティネットで、ほころびがあると死が待っている」

 と前置きし、厚生労働省社会・援護局 村木厚子局長・内閣法制局 山本庸幸長官に対し、それらの項目が含められた経緯についての答弁を求めた。

生活保護法改正案第24条に関する答弁を行う、厚生労働省 社会・援護局長の村木厚子氏(衆議院インターネットTVよりキャプチャ)

 村木氏・山本氏によれば、厚生労働省は、内閣法制局に対し「技術的アドバイス」を求めた。厚生労働省では、今回の生活保護法改正案の策定にあたって、福祉事務所の調査権限を強化する方針としていた(第28条・第29条)。内閣法制局は、

 「担当者は、調査すべき対象事項について、(情報を)申請者から求めることが望ましい」

 とアドバイスした。この内容が、改正案の第24条となった。

 長妻議員は、

 「生活保護法という機微に触れる制度に関して、申請にあたって必要な書類やその中身が条文に書き込まれ、世の中に不安・不信が広がっている」

 と指摘した。村木局長は、

 「運用は変えない」

 と答弁した。さらに長妻議員は、

 「運用を変えないのなら、削除して今と同じ扱いにしては? どうしても書面の中身も規定する必要がありますか?」

 と、「水際作戦の法制化」に関する懸念について食い下がったが、最後に答弁した田村厚労相は、

 「運用はなんら変わりません、心配されているような形にはならないし、させません。そのように徹底します」

 と繰り返し、第24条を削除できない理由については

 「(既に)国会に提出したから、提出したもののなかで国会で議論してほしい」

 とした。

 では、この「望ましい」という理由によって含められた改正案第24条が、懸念されているとおり「水際作戦の法制化」に用いられたら、どのような問題が発生するだろうか? 含める利益と含めない損失を比較したとき、結果はどのようになるだろうか?

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、2匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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