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生活保護のリアル みわよしこ
【政策ウォッチ編・第28回】 2013年6月14日
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みわよしこ [フリーランス・ライター]

生活保護法改正案は「水際作戦の法制化」!?
衆議院・厚生労働委員会での攻防(上)
――政策ウォッチ編・第28回

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●改正案の重要なポイント

 最後のセーフティネットとして、必要な人は確実に保護する体制は維持。さらに、今後も制度が国民の信頼に応えられるように

・生活保護受給者それぞれの状態や段階に応じた自立の促進
・不正受給対策の強化
・医療扶助の適正化

 のための措置を行う。

●施行日

 平成26年(2014年)4月1日

 筆者は思う。『古い』は改正の理由になりうるのだろうか?成立から何年が経過していようが、変えるべきでないものを変える必要はない。少なくとも、現在の生活保護法よりも確実に「良い」近未来が提示されるのでない限り、抜本的な改革には慎重であるべきだろう。生活保護制度は、改悪されれば死者が出る制度だからだ。

 まずは、自民党が「改革」を必要とする根拠と、改革の方向性を見てみよう。

自民党は法改正の必要性を
どう認識しているか

福祉事務所の体制強化・生活保護制度の適正執行などについて、質疑を行う田中英之氏(自民党) (衆議院インターネットTVよりキャプチャ)

 2013年5月29日、衆議院厚生労働委員会で質疑に立った田中英之衆議院議員(自民党)は、冒頭、生活保護受給者(2013年2月は216万人)・生活保護費(2013年度は3兆8000億円)が、国家財政を圧迫している現状を指摘した。原因としては、長年にわたって大きな制度改正がなかったことを指摘した。

 さらに改正案に対し、

 「不正受給によって、制度に対する国民の信頼や公平感が薄れた」

 「厳しい社会状況の中、稼働年齢層の生活保護受給者が、仕事もせず仕事を探さないことに対して、国民が『なんで働かない』という不信感を持っている」

 「(あらゆる世帯類型を含め)全体が増えているが、10年間で『その他の世帯(世帯主が健常かつ稼働年齢層)』が4倍に増加」

 といった問題を解決することを期待しつつも、生活保護を「本当に」必要とする人を保護する体制については守っていく必要性を強調し、

 「公正な制度として維持するための制度改革に」

 と期待を述べた。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、2匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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