おなかいっぱい食べさせられなくてごめんね――。そんなメモを残した28歳の母と3歳児の遺体が5月24日、大阪のワンルームマンションで見つかった。部屋に冷蔵庫はなく、口座には数十円。そんな状況のせいか、「夫の暴力から逃れ、困窮の果てに餓死した」といった話が独り歩きし始めた。だが取材を重ねると、それとは矛盾する事情も見えてきた。
ドアの前に、だれかが毎日のように花束や菓子、ジュースを供えている。「カルシウムと鉄分の多いミルク」という商品名の牛乳は、子を最後まで思いやって亡くなった親心を思ってのことだろうか。
井上充代さんと瑠海(るい)君の遺体が見つかった大阪市北区天満2丁目のマンションの室内に、生活感は乏しかった。府警によると冷蔵庫はなく、食べ物は食塩だけ。電気、ガスは2月初めに止められていた。財布の中に現金はなかったが、一方で、複数の高級ブランド靴が整然と並んでいた。他に、夫と充代さんが署名した離婚届とガス料金の請求書。息子へのメモは、請求書の封筒にあった。
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朝日新聞社会部