消費増税の影響注視、物価下振れ「少し意識」=白井日銀委員
[旭川 13日 ロイター] - 日銀の白井さゆり審議委員は13日、北海道旭川市内で講演し、「量的・質的金融緩和」導入以来、不安定化している債券市場について、動向を丹念に点検していくとし、日銀の柔軟なオペ運営などを通じた長期金利の安定に期待感を表明した。
日銀は2%の物価上昇率目標を2年程度で達成する方針を掲げているが、白井委員は、物価見通しのリスクについて下振れを少し意識する必要があるとし、リスク要因として消費税率引き上げの影響を注視する考えを示した。
白井委員は「量的・質的金融緩和」が長期金利に与える影響について「主としてリスクプレミアムを、次いで予想短期金利を下押しする効果が期待できる」とする一方、景気回復期待やインフレ期待、海外経済の回復を背景とした海外の長期金利の上昇が「予想短期金利に影響を及ぼす可能性がある」と分析した。
これを踏まえた今後の長期金利の動向は、日銀の金融緩和政策によって「金利低下圧力が継続的にかかり続ける」中で、2%の物価上昇率目標に対するコミットメントを通じて「最終的に2%物価安定目標と整合的な水準へ向けて安定していくことが見込まれる」との認識を示した。
日銀として「今後も債券を含めた金融市場の動きを丹念に点検」していくとし、市場との対話などを通じた「柔軟なオペ運営」などで「長短金利ともに全体として安定的な経路に沿って推移することを期待している」と述べた。
日銀では、消費者物価の前年比上昇率について、消費税率引き上げの影響を除いたベースで2014年度に1.4%、2015年度に1.9%に上昇していくと見込んでいる。白井委員は、物価見通しに対するリスクについて「上下におおむねバランスしている」としながらも、「あえて言えば、下方リスクを少し意識する必要があると個人的には考えている」と語った。
そのうえで、特にGDPギャップに対する物価の感応度に注目していると指摘。物価上昇率と失業率などマクロ的な需給バランスの関係を示すフィリップス曲線の変化について「不確実性が高く、想定するほどスティープ化しない可能性を意識している」と述べた。
さらに2014年4月に予定されている消費税率の引き上げに関し、個人消費の減少を懸念する企業が多い場合には「消費税の上乗せ分以上の販売価格の引き上げを2015年度以降に先送りする可能性があるかもしれない」とし、「2014年度の物価上昇率は想定よりも下振れる可能性を意識している」と語った。
物価をめぐるリスク要因のうち、消費税率引き上げの影響を注視。日銀では、消費税率引き上げの影響を含めた2014年度の消費者物価の前年比上昇率を3.4%と見込んでいるが、日銀による「2%のインフレ目標」という言葉が先行していることから、「家計の短期のインフレ期待は、2%程度かそれ以下に留まっている可能性がある」との見解を表明した。
このため、消費税率引き上げの影響が意識され始める2014年度は、家計のマインドに下押し圧力が加わり、「内需が減少し、その影響が長引く可能性を意識している」と述べ、日銀として消費税率引き上げ分を含めた物価見通しを「早くから、より効果的に情報発信していく必要がある」と強調した。
(伊藤 純夫 編集 田巻 一彦)
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