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医療費免除の打ち切り「不公平だ」 宮城の被災者

 宮城県内で、医療費負担にあえぐ東日本大震災の被災者が増えている。宮城県が、被災した国民健康保険(国保)加入者の窓口負担を免除する制度を打ち切って約3カ月。岩手、福島両県は制度を継続しており、被災者は「不公平だ。現状では自立のめども立たないのに」と悲鳴を上げる。(片桐大介)

 「医療費だけでも支出がなくなれば楽なんだけど…」
 仙台市宮城野区の無職男性(82)は、切々と窮状を語った。自宅は津波で被災した。妻(81)、長男(55)と、区内のみなし仮設住宅で暮らしている。
 震災前から糖尿病を患っていた長男は、避難生活で食事が不規則になり、症状が悪化した。震災後、入退院を7回繰り返している。
 入院費や通院費の窓口負担はゼロだったが、3割負担が復活した4月以降は通院費と薬代を合わせて毎月約5万円支払っている。
 収入は夫婦の年金だけ。男性は「自分がいつ倒れるか分からない。息子の将来が不安だ。仮設を出た後の住宅費用も必要なので、お金は少しでもためたい」と話した。

◎「復興で財政難」
 窓口負担免除の対象者は、宮城県内で約18万人いた。国保加入者は農家や自営業者に加え、退職者や無職の人が多く、震災後、生活費に苦しむ被災者も少なくない。
 免除制度は、自宅が半壊以上の判定を受けた国保加入者らを対象に、国が全額拠出する形で始まった。昨年10月、制度を独自に設ける市町村に国が8割補助する方法に変更。宮城県は、残る2割を県の負担とした。
 3月までの県負担額は約30億円。県は「県単独の負担継続は難しい」(県国保医療課)と判断し、3月下旬、県と市町村が折半する方法を全35市町村に打診した。その結果「復興事業が重なり財政は厳しい」(仙台市)などの回答が多く、制度の打ち切りを決めた。

◎制度復活求める
 一方、岩手、福島両県は市町村と負担を1割ずつ分担する方法で制度を継続する。岩手県は、全33市町村の約2万6000人が対象で、12月までの継続を決めた。県健康国保課は「市町村から継続を求める意見が多かった」と話す。
 福島県内では津波被害を受けた相馬、南相馬両市と新地町の2万人弱が免除対象。福島第1原発事故に伴う避難区域の住民に対しては、国が全額免除している。
 宮城県内の医師や歯科医師でつくる県保険医協会には、被災者から「4月から受診を我慢している」「岩手、福島と比べ不公平だ」「仮設暮らしが長引き、病院に行く回数が増えた」などの声が寄せられているという。
 同協会の北村龍男理事長は「国が責任を持つべき課題だが、自治体も積極的に被災者を支援する立場に立ってほしい」と制度の復活を求めた。


2013年06月13日木曜日


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