トルコ:反政権デモ拡大 「イスラム色強化」に反発
毎日新聞 2013年06月04日 12時57分(最終更新 06月04日 13時18分)
【エルサレム大治朋子】トルコのイスタンブールで5月末に始まった反政権デモが全国200カ所以上に拡大し、一部に暴徒化の兆しも出始めた。株価は急落し、長期化すれば東京などと争う2020年夏の五輪招致運動への影響も懸念される。10年におよぶ長期安定政権を維持してきたエルドアン首相に対するかつてない「市民の怒り」の背景には、政権の保守化や所得格差の拡大などへの不満があるようだ。
◇五輪招致に影響?
デモ隊は3日夜も「首相は退陣せよ」などと書いた旗を掲げ、エルドアン首相を「独裁者」と呼んで批判を強めた。AFP通信は現地からの報道として、同国南部で22歳の男性がデモ参加中に何者かに銃撃され、病院で死亡したと伝えた。地元メディアによると、2日夜には首相が党首を務める公正発展党(AKP)の地方事務所に火炎瓶が投げ込まれた。
一方、首相はデモを「過激派が組織した」と強調し、AKPの勢力拡大に反発する他政党などの仕業だと訴えている。
AP通信によると株価は週明けの3日、先週末に比べ10.5%下落。好調なトルコ経済に影を落とす。また、9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会で開催都市が決まるため、イスタンブール五輪招致委員会は「すべての担当者が夢である招致に向け団結して取り組んでいる」との声明を出し、懸念の一掃に躍起となっている。
ただ、DPA通信によると、IOCのバッハ副会長(ドイツ)は「(デモは決定権を持つ)IOC委員の決断に全く影響しない。委員は7年後に開く五輪招致を議論していることを分かっている」と、デモには影響されないとの見通しを示した。
デモの発端は、イスタンブール中心部のタクシム広場付近の再開発計画。公園の木を伐採しようとした行政当局に対し、市民グループが中止を求めた。
英市民団体によると、イスタンブール市の総面積のうち緑地が占める割合は1.5%(東京は約3%)と低い。伐採予定の木はわずか数本だったが、市民らの抵抗の状況を「ツイッター」などを通じて知った若者らが広場に集まり、警官隊と衝突。催涙ガスや放水車が使われ、大規模デモに発展し地方にも飛び火した。
その背景には「イスラム色」を強める政権への不満がある。国民の大半が世俗派のイスラム教徒であるトルコは、政教分離が国是。