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睡眠薬の適切使用に向けた初の指針
6月13日 16時17分

成人の10人に1人とされる不眠症で、長期にわたって睡眠薬を使い続け、薬に頼らないと眠れない依存性の生じる患者が多いとして、厚生労働省の研究班は、睡眠薬の適切な使用に向けた初めての指針をまとめました。

精神科医などで作る厚生労働省の研究班によりますと、不眠症の患者の19%は少なくとも4年間、睡眠薬の処方量が減らず、薬に頼らないと眠れない依存性の生じるケースが多いとみられています。
また、長期にわたって睡眠薬を飲み続けた場合に、急に薬を中断すると、めまいや震え、それに不眠の悪化など、「離脱症状」と呼ばれる禁断症状が生じるおそれもあります。
研究班が13日に公表した指針では、睡眠薬の適切な使用に向け、眠れないと訴える患者には、まず生活習慣の改善を指導し、睡眠薬を処方する前に、うつ病を併発しているなど長期服用につながりやすいかどうか検討すべきだとしています。
さらに心理面や行動面からの治療も取り入れるとともに、患者の睡眠状態や体調の変化を細かく聞き取って徐々に薬を減らし、最終的には薬を飲まなくても眠れることを目標にすべきだとしています。
そのうえで、治療中に直面することの多い具体的な問題を40項目にまとめ、現時点で最善とされる対応例と患者と医師、それぞれに向けた解説を示しています。
研究班の代表を務める国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長は「医師は、患者が眠れるからといって睡眠薬の処方を漫然と続けるべきでない。指針を活用し、出口を見据えた治療に取り組んでほしい」と話しています。

睡眠薬の「離脱症状」に悩む患者

長期にわたって睡眠薬を使い続けると、薬の服用をやめたときに「離脱症状」と呼ばれる強い不安感や不眠の悪化に苦しめられる患者も多くいます。
埼玉県に住む62歳の男性は、3年前、単身赴任中に仕事のストレスや孤独感から眠れない日が続き、不眠症と診断されました。
2種類の睡眠薬を処方され、はじめは寝つきが悪いときだけ服用していましたが、薬を飲むとよく眠れるため、3か月を過ぎたころから毎晩、布団に入る前に飲むようになりました。
「薬さえあれば眠れる」という安心感から軽い気持ちで常用するにようになったといいます。
一方で、疲れやだるさを感じることが多くなり、去年5月、男性は医師の指示を受けないまま2年間続けた睡眠薬の服用を突然、やめました。
睡眠薬に依存してしまうのではないかと不安になったからです。
薬をやめて3日後、男性は、外出先で、突然、ひどいめまいに襲われ、息が苦しくなりました。
しばらく気分が落ち込んで外出するのも難しくなり、夜は不眠症状の悪化に苦しめられたということです。
不眠症専門の医師を受診したところ、長期にわたって飲み続けた睡眠薬を突然やめたことによる「離脱症状」と診断されました。
この医師の指導で徐々に睡眠薬の量を減らし、半年後の先月、ようやく薬がなくても眠れるようになったということです。
男性は「睡眠薬を服用しているときは眠れるなら大丈夫と安易に飲み続けていましたが、医師の指導で薬をやめてからはこまめに運動を続けるなど、生活環境を見直したら、日頃の不安を取り除くことができました」と話しいます。

不眠症は成人の10%に

厚生労働省の研究班によりますと、国内では、成人の10%が不眠症とされ、なかなか眠れない、夜中に目が覚める、熟睡できないといった不眠症状のある人も含めると30%に上るとみられています。
研究班がおよそ33万人のデータを分析したところ、国内では5%の人が医療機関から処方された睡眠薬を服用しているとみられ、中でも65歳以上の女性は6人に1人、男性は10人に1人と、年齢が上がるにつれて割合が高くなっています。
これは高齢化に伴い、眠りが浅くなるだけでなく病気や孤独から睡眠が十分にとれなくなり、不眠症になるケースが多いためとみられています。
患者が1日に服用する睡眠薬の量を年齢別にみると、最も多く飲んでいるのは40歳から45歳までの男性で、次いで45歳から50歳の女性ととなっています。
また、1日の平均服用量は、平成17年には1錠以下でしたが、その後、4年間で15%増えたということです。
さらに、平成17年に睡眠薬を処方された患者の4人に1人は4年後も薬を飲み続けていて、このうち、薬の量が減っていなかった人は68%に上ったとしています。
研究班は不眠が改善しても医師が患者の症状を見極めないまま、漫然と処方しているケースが多いとみています。
研究班によりますと、効果が乏しいまま睡眠薬を飲み続けたり、数種類の睡眠薬を併用したりすると、ふらつきやめまいといった副作用が表れることがあるということです。
また、長期にわたって睡眠薬を飲み続けている患者が、不眠が治っていないのに薬の量を急に減らしたり、服用をやめたりすると、体の震えや不眠の悪化など「離脱症状」に悩まされることがあるとしています。

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