青森県立美術館:年間入場者数、東北7連覇のわけ

2013年06月02日

白を基調とした外観が特徴の県立美術館エントランス付近
白を基調とした外観が特徴の県立美術館エントランス付近
約400平方メートルのアレコホール。シャガールの巨大な絵は壁から離れないと全体を把握しにくい
約400平方メートルのアレコホール。シャガールの巨大な絵は壁から離れないと全体を把握しにくい

 青森市安田近野の青森県立美術館(県美)の昨年度の入場者数は38万9227人で、東北地方の県立美術館では最多を記録した。06年の開館以来7年連続だ。後発美術館ゆえに、青森出身の芸術家に特化した常設展を展開。あえて複雑にした館内通路などの取り組みも、アート好きの「何度でも来たい」との反応を呼び起こし、入館者数や決算額でも全国の都道府県立美術館のトップ10の常連となっている。【宮城裕也】

 ◇迷って発見がある

 開館時から展示に携わる学芸員の工藤健志さんによると、県美の特徴は、案内表示や張り紙をしていないことだ。「新しい発見は、迷って歩き回る中でこそ見つかる」との考え方に基づく。迷ったら、中央に設置してある約400平方メートルの「アレコホール」に戻れば良い。天井の高さも約20メートルと高い巨大なホールには、シャガールがバレエ「アレコ」のために描いた巨大な背景画が3点展示してある。

 このホールを中心に、板画家の棟方志功や美術作家の奈良美智、ウルトラマンの怪獣を創作した成田亨など県出身の芸術家13人の作品を展示。原則、1作家につき1部屋のスペースを割り当て、比較的人気が高い棟方、奈良、成田などの展示は固定し、他の作家の作品は年4回のペースで入れ替えている。

 年3回の企画展も、常設展示の作家にちなんだものを扱うのが特徴だ。海外や既設の人気美術館の所蔵品を利用した「持ち込み企画」に依存しない体質を目指す。工藤さんは「青森の作家はユニークな作家が多く、青森の力で勝負したい」と話す。

 こうした取り組みへの評価は高く、県美の集客数は全国の都道府県立の美術館63館の中でも上位に位置している。12年度までの7年間の累計入場者数は約269万人にのぼる。開館10年の16年には、青森の作家の魅力を海外にも伝える国際芸術祭を開く予定だ。

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