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【私説・論説室から】

AKB48の正義の話を

 中学生の娘が怒り心頭なのである。アイドルグループAKB48の三十二枚目のシングルを歌うメンバーをファン投票で決める選抜総選挙で、さしこが首位の座を射止めたからだ。

 さしここと指原莉乃(さしはらりの)さんは、熱愛話が発覚して福岡・博多のHKT48に“左遷”された身だ。まゆゆこと渡辺麻友さん支持の娘にとって、恋愛禁止のおきてを破ったさしこの戴冠が我慢ならないようだ。

 政治家を選ぶ公職選挙とは違い、カネ持ちファンは好きなだけ投票権を買い占められるシステムだ。商業主義の芸能パフォーマンスに公平性やら透明性やらを期待する方がおかしい。

 それに、騒ぎは大きければ大きいほど宣伝効果が高まる。順位の妥当性はどうであれ、ギョーカイはほくそ笑んでいるに違いない。

 にしても、不平等にも程があると言いたいらしい。個々のメンバーの顔触れはもちろん、歌と踊りの実力を熟知していると称する娘は「誰かが裏で手を回したはずだ」といぶかる。

 地獄の沙汰もカネ次第とか、正直者がばかを見るとか。善かれあしかれ、そんな社会の実相を学び取った雰囲気ではある。

 でも、反省して頑張ってきたさしこのけなげさが評価された可能性だって大きい。一度の過ちで人を見限る非寛容な社会への抗議の表れだったかもしれない。

 家庭で学校で、選抜総選挙が問いかけた正義の話をしてみては。 (大西隆)

 

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