2013-06-12 23:30:05

摂食障害と歯の話

テーマ:境界型人格障害
古典的摂食障害は、拒食、嘔吐、下剤の乱用が前景にあり、過食行動が目だたなかった。従って時に著しい体重減少を来たし、時に20kg台に至り、それが原因で死亡する患者もいた。

彼女たちは、飽食の時代に、栄養失調で死亡していたのである。

現代社会では、摂食障害で体重が30kgを切る人はむしろ稀である。正常体重、あるいは過食が前景にあり、肥満を来たしているケースも多い。

食べるのか、食べないのか、むしろそのセルフコントロールが不能になっており、その結果、どちからというと、肥満傾向に傾く。

その理由は、ダイエットをしたことがある人はすぐにわかるが、少々食べないようにしていても、一時の4000~7000カロリー級の過食行動のために、それまでの苦労が無駄になるからである。

そこで、その調整のために行われるのが嘔吐と下剤の乱用である。稀なものとして、医療関係者のラシックスの乱用がある。

古典的摂食障害の女性は「美しくありたいという」という願望はかつてはあったのだろうが、発症してからは、もうどうでも良くなっていた。と言うよりそれが変質し、「空気のように軽くありたい」という漠然としたものになり、「望んでいるボディ・イメージ」や「現実の身体」は、男性の憧れるスタイルとはむしろかけ離れてしまっていた。

彼女たちは、女性性すら喪失していたと思う。月経もない方が良いと言っていたから。

その意味では、古典的摂食障害の人は「現実感の喪失」という視点で重篤だったと思う。病識が完全に欠如し、むしろ奇妙な体になってしまっているのである。あれが精神疾患でなくて、何であろう!

現代社会の摂食障害の「過食」と言う所見だが、元々食べることはヒトの本能に沿う行動ではある。そのボリュームに問題があるが・・

また「嘔吐」という行動も、過食と一連のものならば合理的な行動である。過食した後、「太って大変なことになる」と大パニックを起こし嘔吐する。これをセットと考えると、一応、誰にも理解可能な反応と見るのが自然である。

1990年代後半の摂食障害の人は、しばしば嘔吐に由来する「歯の喪失」が生じていた。その理由は主に2つある。1つは拒食状態が優位で、慢性的な栄養不良の状況で嘔吐するからである。もう1つは、歯に対してケアする意識が低かったこともある。つまり、より美しくありたいという気持ちが既に希薄になっていたのであろう。(中等度以上の現実感の喪失)

この視点では、1990年代後半の摂食障害の人は、古典的摂食障害の人と、現代的摂食障害の人の中間に位置すると言える。

現代社会の摂食障害の嘔吐の人はより現実的である。まず、嘔吐の際に歯を失わないようにパイプを喉に突っ込んで嘔吐する人もいる。また嘔吐はしたいが、歯に影響するので下剤の大量で我慢する人もいる。

現代社会の摂食障害の人は、現実検討能力という点で、かつての摂食障害より遥かにリアル世界に沿っている。正常体重の人の多さもそれを反映している。

余談だが、日本人は縄文時代に比べ噛む回数がかなり少ないと言う。マクドナルドなど軟らかい食物が多いことも関係がある。また江戸幕府の家康などはかなり歯が良かった。しかし吉宗あたりではかなり悪くなる。幼少期にどのような生活をしていたのかも関係がある。粗食の人は噛む回数が多いので良いと言う。(参考

欧米だと、意外だが白人は歯の疼痛に敏感らしい。黒人でもヨーロッパに移住して三代くらいすると弱くなるという。基本的に、日本人は歯が相当に弱い人種である。

摂食障害の人の歯に対するケアのあり方や、現実検討能力などを診ると、摂食障害は全般的に統合失調症と同様に軽症化しているようには見える。ただし、裾野は広がっているといえる。

昔は摂食障害はその疾患自体のために一次的に死亡していたが、現代社会の人は拒食が過ぎて、20kg台になって死ぬことは極めて稀である。

しかしながら、現代社会の摂食障害の人は自殺既遂は十分にありうる。つまり、一次的死亡は稀なほどには軽症化しているが、その随伴症状で死亡することはあるのである。それは、アルコール依存症の合併での死亡や、欧米での薬物中毒による死亡も2次的と言う意味で同様である。


(今回の記事は、必ずも境界型人格障害とは言えないですが、検索で目に触れやすいように境界型人格障害のテーマに入れています)

参考
精神科の怪しい伝説②
βエンドルフィンと摂食障害
女性の理想像と幻想
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コメント

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1 ■むちゃ食い障害

双極2型と診断されています。

むちゃ食い障害という摂食障害が併病であるらしいですが、私はこれに当たると思います。

170cm65kgなので太ってはいません(うつ時は53kg)。

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