元妻切り付け:伊勢原署員が虚偽報告「被害者に電話した」
毎日新聞 2013年06月11日 22時16分(最終更新 06月11日 23時07分)
神奈川県伊勢原市で5月21日に女性(31)が元夫に切り付けられ重傷を負った事件で、県警は11日、事件の約1カ月前に女性から監視されているのではないかと相談を受けた伊勢原署員が、過去にも同様のケースがあったと聞きながら上司に報告していなかったことを明らかにした。別の署員が「相談後に女性に電話をかけた」と、うその報告をしていたことも判明。県警は適切に対応していれば事件を防げた可能性もあるとして関係者の処分を検討し、女性の回復を待って謝罪する。
事件では、元夫の塾経営、貞苅詩門(さだかり・しもん)容疑者(32)=埼玉県所沢市=が殺人未遂容疑で逮捕されている。
県警によると、女性は4月20日、「自宅近くに自転車が放置され荷台の箱からカメラのような物が見える」と通報。駆け付けた同署地域課の警部補(40)と巡査(24)に、貞苅容疑者のドメスティックバイオレンスを説明し「2年前に実家で暮らしていた時も箱の取り付けられたバイクがあった」と伝えた。しかし、警部補は時期的に関係がないと判断、巡査が報告書を書く際に削除させていた。
また、相談を引き継いだ同署生活安全課の警部補(49)は事件直後、県警の内部調査に「4月22日に防犯指導のため被害者の携帯電話に連絡したが出なかった」と説明したが、女性側に着信記録はなかった。この警部補は「事態の重大性に怖くなり、思わずうそをついた」と話しているという。
自転車はカメラが積まれ、発見直後に防犯登録から探偵業者関係者の所有物と判明。事件後の捜査で、貞苅容疑者から女性の動向調査の依頼を受けた探偵業者が置いていたことが分かった。
県警は「2年前の件の報告があれば、より踏み込んだ対応ができたかもしれない。被害者に電話していれば本人が予防措置を講じられた可能性もある」としている。【河津啓介】