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津波水没のビル 22人助かる
6月11日 19時22分

津波水没のビル 22人助かる
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おととしの津波でほぼ水没した、宮城県女川町の5階建てのビルで、中にいた22人が溺れずに生き延びていたことが、当時の映像や証言で明らかになりました。
窓がなく、空気の逃げ場がない部屋だったため、空気の圧力で水が一定以上侵入しなかったとみられ、専門家は「震災の重要な教訓であり、今後の津波対策のために細かく検証すべきだ」と話しています。

女川町の中心部にある「女川町生涯教育センター」は、鉄筋コンクリート造りの5階建てのビルで、東日本大震災が発生した際、周辺から多くの人が逃げ込みましたが、高さ20メートルある屋根まで津波が達しました。
当時、町役場の屋上からこのビルを撮影した写真では、最も高い津波が押し寄せた際、屋根の先端だけを残してビルが水没した様子が分かり、撮影した役場の職員も「5階までは水没していた。中に人がいても生きていないと思った」と話しています。
ところが、5階の機械室に逃げ込んだ、高齢者や子どもを含めた22人は全員無事でした。
当時、機械室に避難した中学校教諭の色川洋二さん(45)ら、複数の人によりますと、水はひざの高さほどまで上ってきたものの、それ以上は上がらなかったということです。
機械室にいた人たちは、子どもやお年寄りがぬれないよう、高さ1.5メートルほどの空調機などの上に上げ、室内にあったフィルターに使われるシートを切り分けて、毛布代わりにして寒さをしのぎ、周囲から津波が引いた翌日、ビルから脱出したということです。
津波からの避難施設に詳しい、東海大学海洋学部の田中博通教授は、「機械室の気密性が高かったために、外の水位が上がっても室内に水が入らなかったのではないか。コップを逆さにして水の中に入れても、中に水が入らないのと同じ現象だ。今後の防災に教訓となる事例であり、細かく検証することが重要だ」と話しています。

「津波シェルター」開発に生かす

女川町のビルで起きたような現象を生かして、建物が水没しても室内の浸水を食い止める「津波シェルター」を開発する動きが相次いでいます。
このうち、静岡市の住宅メーカーは、住宅の屋上に設置する津波シェルターを開発しました。
鉄筋コンクリート造りで3畳ほどの広さがあり、室内のあらゆる隙間が特殊な樹脂で覆われ、空気を逃がさない構造になっています。
メーカーが行った実験では、シェルターを水没させても、密閉された空間になっているため、空気の力で浸水を押さえ込み、50センチほどの高さで浸水が止まります。
メーカーは、密閉したシェルターの中で大人4人が最長で8時間滞在できるとしています。
開発のきっかけは、津波の被害にあった住宅を調べていた際、水没したのに1階の天井がぬれていないことに気付いたためだということで、この1年半余りで54戸を販売したということです。
メーカーの担当者は「静岡県沖で起きると言われている津波の想定では、揺れから津波の到達まで早ければ5分以内と言われている。お年寄りや体が不自由な人など、遠くへの避難が難しい人の命を守る手段になるのではないか」と話してます。
津波からの避難施設に詳しい東海大学海洋学部の田中博通教授によりますと、こうした「津波シェルター」は、震災のあと、東海地方や四国のメーカーなどが開発を進めていて、船のように浮く形のものを中心に、10社以上が商品化しているということです。
しかし、課題もあるといいます。
一つは、津波で流されたがれきなどがシェルターに衝突した場合に耐えられるかどうかです。
大型の漁船など、かなりの重量があるものが衝突することを想定すると、相当な強度が必要になります。
また、東日本大震災では火災も相次いだことから、防火の機能も必要です。
このほか、船型の場合は引き波にさらわれて沖に流されないかや、建物型の場合は、水に沈んでいる時間が想定より長くなると呼吸のための空気がもたなくなることなども課題に挙げられるということです。
こうした津波シェルターの安全基準は、国土交通省が船型のシェルターのガイドラインを今月公表したものの、十分には確立されていないと田中教授は指摘しています。
田中教授は「企業の開発が盛んになっているが、どのようなシェルターが安全なのか、あらゆる角度から議論する場を国が作るべきだ」と指摘しています。

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