プロ野球で使われるボールの規格は『公認野球規則』で決められています。
ですから、世界中どこの国でもこのルールに定められた同一規格のボールで試合が行われることになります。
規則は簡単です。
「ボールはコルク、ゴムまたはこれに類する材料の小さな芯に糸を巻きつけ、白色の馬皮または牛皮二片でこれを包み、頑丈に縫い合わせて作る。
重量は5オンスないし5オンス1/4 (141.7グラム〜148.8グラム) 、周囲は9インチないし9インチ1/4 (22.9センチ〜23.5センチ) とする」とこれだけです。
材料、重さ、大きさだけが決められているのです。しかし、大リーグでも日本球界でも習慣的に決まっている部分もあります。
まず、材料は牛皮です。縫い合わせの糸目の数が108というのも共通です。
さて、ファンのみなさんの関心は時々話題になる「飛ぶボール」、「飛ばないボール」の反発の問題でしょう。
規則に定められていませんから、飛ぼうと飛ぶまいとどちらでもいいのですが、我ら厳格な日本人はそうはいきません。
大リーグでは試合球を作るメーカーが1社(人件費の安い中米の小さな国コスタリカで作らせています)ですから、大した問題になりませんが、日本では8社が作っています。
どの社のボールも同じでなければ試合の公平さが損なわれます。
そこでコミッショナー事務局では、日本球界独特の厳格な「反発度テスト」をしています。
日本車輌検査協会に特別に作った電子式計測器を設置して、ボールの反発を調べているのです。
超高速マシーンから打ち出したボールを鉄板にぶつけ、ぶつかる前の速度と跳ね返りの速度を計り、その比=反発係数=を出して一定範囲に納まるものを「合格」としているのです。
反発係数とは、たとえば時速100キロで鉄板にぶつかり時速50キロで跳ね返れば、反発係数は0.5となるわけです。
マシーンと連動のパソコンで計測されますが、専門的にいいますと「秒速75メートル (時速270キロ) のところで反発係数0.41〜0.44の範囲に入ると合格」となります。
この基準を上回ると「飛ぶボール」で不合格、下回ると「飛ばないボール」でやはり不合格です。
大リーグの「反発度テスト」は空気銃を使います。
8フィート (2.4メートル) 離れた壁に向けて、時速85マイル (時速136キロ) でボールを発射します。
その跳ね返る速度がぶつかった時の速度より54.6%遅く(時速46.41マイル=72.2キロ)なっていれば合格ということです。
おそらく日本の同じ程度の「反発度」になるのだと思います。
検査はシーズン中に2週に一度のペースで1回平均500ダースを調べます。
メーカーの商標も押していない真っ白なボールを4人の審判員とコミッショナー事務局員が、1メーカーにつき10ダース抜き取り、金属製巻き尺で大きさを計り、縫い目のでき具合を調べ、特性の天びんハカリで重さを計ります。
これに合格したボールに「試合に使ってよろしい」との合格印
「APPROVED BY COMMISSIONER NPB」 が押されるのです。
さらにこの「合格ボール」の中から抜き打ちで各社1ダースを取り出し、反発テストを実施しています。
よく、解説者が「飛ぶボール」などといいますが、これだけ厳格な検査をしているのですから、ファンのみなさんはご安心ください。
また、「大リーグのボールは大きい」という声も聞きますが、日本と同じ大きさです。
これもアメリカの公認球をコミッショナー事務局で検査して確認済みです。
ちなみにコミッショナー印の押された試合球は一般には販売していません。
それほど「貴重」なのです。