あたご衝突事故:自衛官2人、2審も無罪 東京高裁
毎日新聞 2013年06月11日 13時36分(最終更新 06月11日 18時27分)
海上自衛隊イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故(2008年2月)で、漁船の2人を死亡させたとして業務上過失致死などの罪に問われた自衛官2人の控訴審判決で、東京高裁(井上弘通裁判長)は11日、無罪とした1審・横浜地裁判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。
1審に続き無罪とされたのは、あたごの当直士官だった後潟(うしろがた)桂太郎(41)、長岩友久(39)両被告。
清徳丸のGPS(全地球測位システム)機器が水没してデータを再現できなかったことから、衝突に至る同船の航跡が最大の争点だった。
検察側は、海上衝突予防法に基づき、清徳丸を右方向に見る位置にいたあたご側に衝突回避の義務があったと主張、2人に禁錮2年を求刑した。これに対し、11年5月の1審判決は、清徳丸後方の僚船船長の証言などを基に検察側が作成した清徳丸の航跡の信用性を否定。裁判所があたご側のGPS記録などから独自に航跡を認定して「事故直前、あたご艦首に向かって2度右転した清徳丸に回避義務があった」と判断し、2人に無罪を言い渡した。
事故は08年2月19日未明、千葉・野島崎沖で発生。清徳丸の吉清(きちせい)治夫さん(当時58歳)と長男哲大(てつひろ)さん(同23歳)が死亡した。刑事裁判とは別に当事者の懲戒などを行う海難審判では、横浜地方海難審判所が09年1月の裁決であたご側に事故の主因があったと認めた。【山本将克】