皆様、おはようございます。
安倍晋三でございます。今日は大変、良い機会をいただいたことに、まずもって御礼をしたいと思います。
ちょうど、今日、朝、我々はASEAN日本友好40周年を期しまして、ASEANの国々に対するビザの大幅緩和を決定したところであります。
日本経済は回復の途にあります。今年第1四半期の成長率は、年率換算で、4.1%ありました。4月の消費、生産、雇用も改善しています。
日本の雰囲気は、大胆な金融政策と、機動的な財政政策という、私のうった1本目、2本目の矢で、ガラッと大きく変わりました。
ついでに言いますと、昨年第3四半期の成長率は、マイナス3.6%でありました。
比率の変化は、マイナス3.6から、プラス4.1であります。
シュワブさんのように、長年日本を観察してきた方には、きっと、こんなに元気な日本を見るのは久しぶりだと思ってもらえるのではないでしょうか。シュワブさん、いかがですか?
うなづいていただいたと思いますが、ありがとうございました。
「三本の矢」で、どんな日本をつくりたいのか。それを、ご説明いたします。
日本がじっとしていると、世界経済には貢献できません。
小さくなると、世界には、マイナスの効果を与えることになります。
日本は、なんといっても、ドイツと、英国を、合わせたより大きな国であります。
そんな国が、小さくなると、世界に悪影響を与えかねません。それこそ、近隣窮乏化のそしりを免れなくなります。
逆に、少しずつでも大きくなっていきますと、みんなに、いい影響が及びます。世界との、ウィン・ウィン関係ができてきます。
経済をもう一度強くして、世界にもっと貢献できる日本をつくる。それが、私が目指す政策であります。
大胆な金融政策と機動的な財政政策。
「アベノミクス」と呼ばれるようになった私の政策の、最初の二本の矢は、すみずみまでこびりついてしまった「デフレ」という怪物を退治し、日本の自信を取り戻すための取組みでありました。
効果があがっています。そのことはすでに、申し上げました。
しかし本丸は、三本目の矢である成長戦略であります。
その要諦は、民間のあらゆる創造的な活動を鼓舞し、国内から、外国から、あらゆるイノベーションを、日本を舞台に引き起こしていくことであります。
日本には、高品質のものづくりがあります。きめ細かなサービスがあります。
ものづくりから、ひとづくりまで、ていねいにつくって仕上げる、繊細なオペレーションがあります。
日本企業の持つ様々な「可能性」を解き放ち、世界に展開する。そのことで、世界の発展に貢献する。
これが、私の目指す成長の姿です。
就任以来、「世界一、ビジネスをしやすい環境をつくる」
これが、まさに私がずっと述べてきたことであります。
ロンドンやニューヨークといった都市に匹敵する、国際的なビジネス環境をつくる。世界中から、人材、技術、資金を集める都市をつくりたい。そう考えています。
しかし、この目的を達するためには、一つひとつ、規制のモグラたたきをやっていても、キリがありません。
国際的なまちづくりには、外国人でも安心して病院に通える環境が必要です。外国人がコミュニケーション容易な医師から診療が受けられるようにし、トップクラスの外国人医師も日本で医療ができるよう制度を見直します。
子ども達が通えるインターナショナルスクールも充実しなければなりません。国内での設置を困難にしているルールは、大胆に見直しを進めていきます。
職住近接の実現もまた、大都市に住む人には課題です。マンハッタンでは、昼間と夜間の人口に、ほとんど差はありません。街の中心部での居住を促進するため、容積率規制も変えます。
しばらくぶりに、日本の大都会を訪れた方なら、スカイラインの様子が変わったことにお気づきでしょう。10年後、おいでくださると、もっと変わっているはずです。
世界から、ヒト、モノ、カネを呼び込んで、それを成長の糧としてまた大きくなっていく。
そんな日本をつくる闘いに、いま私は乗り出そうとしています。
そのため、キー・パフォーマンス・インディケーター、KPIを、初めて導入することにいたしました。
例えば、外国からの直接投資です。2020年までに、外国企業の対日直接投資残高を、いまの2倍、35兆円に拡大します。今日の為替相場で換算すると、3070億ドル以上になります。
3年間で、国内民間投資の水準を、70兆円、6000億ドル以上に戻します。
できるのか、と、お思いでしょう。これだけか、と、お思いかもしれません。
できるかどうかについては、すぐあとでお答えいたします。
これだけか、というお尋ねについては、このあと、甘利経済財政担当大臣がお話することになっていますね。
甘利さんから話題を横取りしてはいけませんから、あれやこれや、何もかも言うことは控えたいと思います。
しかし、「これだけではありませんよ」とだけは、言っておきたいと思います。
日本の習慣として、次の年に手掛ける税制改革は、前の年の年末に決める、というのが、これまでの通例でありました。
今年は秋に決めることにします。思い切った投資減税や、新陳代謝をうながす税制など。私の成長戦略に切れ目はありません。
「できるのか、どうか」。
規制改革は、実は、小泉政権や第一次安倍政権時代から、相当進めてきました。しかしいま、地面を掘り進めて、固い岩盤にぶつかった状態です。
普通のドリルでは、無理でしょう。ドリルの先が、折れてしまいます。
強力な装備で、力を集中させていかない限り、穴は開きません。
そこが、いままでの「成長戦略」と、私の「成長戦略」の違いです。
チャレンジ、オープン、イノベーションと、私は成長戦略を3つのコンセプトで説明しました。
新しい分野に、リスクをとってチャレンジする日本。
世界に向かってオープンで、知恵と、知恵を体現したヒト、モノ、カネを、世界から呼び込む日本。
そして、イノベーションを生む日本です。
しかし、いちばん大切なのは4つ目の言葉、「アクション」なのです。
成長戦略は作文ではありません。官僚たちがお得意の作文。私は行動で1つ1つを示していきます。
わたしは、今年からの3年を、集中的な改革の期間と位置付けています。
この改革は、回転ドアみたいに、毎年トップが変わるような政治体制ではやり抜けません。
3年に一度の半数を改選する参議院議員選挙が7月後半にやってきますが、負ける訳にはいきません。
そして、選挙が終わったら、いよいよアクションです。国民に実感を与え、世界にも、日本はほんとうに変わったと思って貰えるように、やり抜くつもりであります。
今年は、世界から偉大な指導者が消えてしまいましたね。
マーガレット・サッチャーのことです。
There is no alternative。サッチャー首相の、口癖でした。
TINAと、頭文字をとった四文字言葉まで、有名になりました。
私も、同じです。これ以外の道は、ありません。TINAといつも思って、やっています。
日本の財政を立て直すにも、TINAです。
日本は2007年からの5年間で、GNIを50兆円ちかく失いました。5000億ドル近く、縮んだのです。
ノルウェーとか、アルゼンチンが、まるごと世界から消えたのと同じでありました。
当然、徴税ベースは小さくなって、国債に頼る以外、財政を維持できなくなりました。
これを建て直すには、どうすればいいでしょうか。
やはり、成長しかありません。TINAです。
日本の信用を確保し、経済を持続的な成長の軌道に乗せながら、もう一方の課題。そう、日本の財政規律がロバストであることを世界に示さなければなりません。
成長なくして、財政再建なし、であります。
ここは、ヨーロッパでも、米国でも、議論の的になっていますね。初めに、財政緊縮ありき、というやり方だと、日本は成長できません。
まずは、成長です。そのための、「アベノミクス」です。
そして、財政再建です。
ですから「アベノミクス」とは、世界経済と、日本経済の、Win-Winですし、経済成長と、財政再建の、Win-Winです。
と、いうより、この、ふたつのWin-Winを追求する以外、日本の選択肢はありません。TINAです。
前回私は、潰瘍性大腸炎という持病のせいで、総理を辞めざるを得ませんでした。2007年のことです。
2009年になると、アサコールという、画期的な新薬が手に入るようになりました。
このアサコールというクスリは、ヨーロッパなどでは、もっと早くから出回っていました。
日本では、新薬の認証に、とても長い時間がかかります。外国でできた画期的な新薬を使えば、症状を改善できるかもしれないと思っても、日本のお医者さんはなかなか使えません。
これを、ドラッグ・ラグといいます。
これも、強いドリルで打ち破らなければいけない岩盤の一つです。
いま私は、日本版NIHをこしらえ、それぞれの役所の下で個別に研究するのでなく、新しいクスリを、一点集中的に国家資源を投入していく、研究機関で開発させようとしています。
このクスリが日本で出回るようになるのに、もっと時間がかかっていたら、もしかすると、今、私はここに立っていないかもしれないわけでした。だからこそ、難病の患者の人生を取り戻し、豊かにしていくことが、私の役割、天命だと思っています。
そして、いま患者と申し上げました、それを、日本という言葉に置き換えてください。それが、私の役割だし、天命なのです。日本の力を取り戻し、豊かにすることです。
強い日本は、世界の公共財を、責任もって守り、育てる日本です。
強い日本は、インド洋から、太平洋にかけての、広い海がつなぐ一帯に、平和と、安定と、繁栄をもたらす日本です。
強い日本は、世界から貧困を減らし、子どもや女性の、人権の蹂躙に立ち向かい、疾病や、環境の悪化を少しでも防ぐ日本です。
そういう日本になればいいと思って、再び立ち上がったのです。二度目の機会を手にし、思いはますます強まりました。
日本の将来に、どうぞみなさん投資を続けてください。一緒に、強い日本をつくっていくことをお願いし、今日のスピーチとさせていただきたいと思います。