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(24時間56分前に更新) |
米軍内で性犯罪が多発している。若い下士官・兵だけでなく、指導的な立場にある将校クラスにも不祥事が広がっているというから、事態は極めて深刻だ。
米国防総省は7日、在日米陸軍司令官のマイケル・ハリソン少将を同日付で停職処分にした、と発表した。日本国内の部隊で発生した性的暴行事件の調査や報告を怠ったためだという。事件の詳細は明らかにされていない。
空軍では性犯罪対策部門の責任者だった中佐が性的暴行容疑で逮捕され、ニューヨーク州ウェストポイントの陸軍士官学校では、教官によるシャワー室の盗撮が発覚したばかり。
テキサス州フォートフッド陸軍基地でも、性犯罪防止を担当していた1等軍曹が、部下に性的暴行を加え、売春を強要していた-との疑いがあることが米メディアに報じられた。
5月31日、米ロサンゼルス市で記者会見したバーバラ・ボクサー上院議員(民主)は「対策班の責任者らが次々と事件を起こすなど、米軍は内部から崩壊している」と指摘する。
軍法会議で有罪判決を受けた兵士を上官の司令官が不問に付すケースも発覚するなど、議会では、軍の自浄能力の欠如を批判する声が強まっていた。
日本政府がこの問題で拱手傍観(きょうしゅぼうかん)することは許されない。性暴力の実態について各種データの提出を米軍に求め、具体的な性犯罪防止策を明らかにするよう米軍に申し入れるべきだ。
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米国防総省が発表した米軍内の性的暴行に関する年次報告書によると、2012会計年度(11年10月~12年9月)に米兵が関与した性的暴行の報告数は3374件で、11会計年度から6%増えた。
被害を受けたにもかかわらず報告していない人は推定で約2万6千人にのぼる。
オバマ大統領は5月24日、メリーランド州アナポリスの海軍士官学校卒業式で、「性的暴行を行う者は単に罪を犯すだけでなく、軍の強さを支える信頼と規律を危険にさらしている」と強い調子で警告。ヘーゲル国防長官も25日、ニューヨーク州ウェストポイントの陸軍士官学校卒業式で「この悪疫」と表現し、性犯罪の防止を訴えた。
米政府がこの問題を深刻に受け止めているのは明らかだが、実効性のある対策を打ち出せるかどうかという点では、疑問が残る。沖縄では復帰後、事件発生のたびに再発防止が叫ばれ、裏切られ続けてきたからだ。
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バーバラ・ボクサー上院議員は記者会見で、軍内部の性的暴行の撲滅と被害者救済を求める法案を米議会に提出したことを明らかにした。
会見には、沖縄で勤務していたとき上司からレイプされたという元在沖米海兵隊の女性も同席し、赤裸々に体験を語った。
沖縄でもこの機運を広げ、日米両政府に情報開示と実効性のある対策を迫っていくことが重要である。女性の人権が日常的に脅かされている現実を放置してはならない。