あべのハルカス案内板、見やすく工夫 久保工繊大院教授監修
報道陣に10日に公開された近鉄百貨店の「あべのハルカス近鉄本店」は、全面開業すれば10万平方メートルという日本最大級の売り場面積を誇る。近鉄は、買い物客に分かりやすい案内表示が重要として、京都工芸繊維大大学院の久保雅義教授に案内表示の監修を依頼。大きさや色を工夫し、より見やすさを追求したユニバーサルデザイン(UD)の表示を館内随所に設置した。
久保教授は松下電器産業(現パナソニック)で製品デザインやブランドデザインを長く手がけ、現在は同大学のサスティナブルデザイン教育研究センター長を務める。
依頼を受け、2年前から調査を開始。高齢者と若者を対象に、数種類の表示サンプルを使った見やすさの実験を行うなどしてきた。店内の広さを考慮した上で、通路天井に下げる横長の案内板は従来より約3割長い約1・6メートルに、地色はベージュから白に変えてピクトグラム(絵文字)とのコントラストを際立たせた。
ハルカスは関西空港に近く、外国人旅行者の来館も増えると予想される。エスカレーターが上下片方ずつしかない場所には、「上り」「下り」の表記を矢印に置き換えるなど工夫した。
さらに、ハルカスは「タワー館」と来春開業する「ウイング館」があり、天井高の違いからウイング館に「3・5階」ができ、複雑なフロア構成となる。このため全館案内図を従来の約1・5倍に拡大、現在地のフロアの色を反転させ、一目で館内のどこにいるか把握できるようにした。
案内表示はタワー館で約200カ所に設置する。ウイング館も同程度になる見込みだ。久保教授は「子どもからお年寄りまで訪れる空間であり、ぱっと見て分かり、安心できることが大切」と話す。
近鉄は客1人当たりの店内滞在時間を従来の約70分から、百貨店として日本一となる約2時間に延ばしたい考えだ。案内表示を見てストレスなく館内を巡り、買い物できることがその鍵を握りそうだ。
村山嘉健新本店準備本部部長は「専門家に監修してもらったのは初めてで、百貨店の財産になる。今までは現場の判断で表示を変えることがあったが、きちんと守っていきたい」としている。
【 2013年06月10日 22時56分 】