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<PC遠隔操作>警察の捜査が事実上終了

毎日新聞 6月10日(月)23時50分配信

<PC遠隔操作>警察の捜査が事実上終了

「コンピュータウイルス関連犯罪協議会」の初会合。民間との連携強化を目的に警視庁が発足させた=2012年10月、松本惇撮影

 パソコン(PC)遠隔操作事件で、警視庁などの合同捜査本部は10日、遠隔操作ウイルスを誤認逮捕された男性3人を含む計6人のPCに感染させたなどとして、元IT関連会社員、片山祐輔被告(31)を不正指令電磁的記録(ウイルス)供用と威力業務妨害容疑で追送検した。ウイルス作成容疑でも捜査したが片山容疑者が取り調べを拒否し供述が得られなかったとして断念した。一連の事件を巡る警察の捜査は事実上終結した。

 送検容疑は昨年7〜9月、遠隔操作ウイルスの「iesys.exe」を6人のPCに感染させた。昨年8月には感染した男性(21)のPCを操作しアイドルグループへの襲撃予告を書き込んだとしている。【喜浦遊、宇多川はるか、永野航太、武内彩】

 ◇民間との連携強化 課に格上げ、増員も

 遠隔操作事件以外にも相次ぐネット犯罪。警察は容疑者特定に向け捜査の立て直しを余儀なくされた。

 誤認逮捕発覚直後の昨年10月。安倍晋三自民党総裁(当時)への殺害予告メール事件で、警視庁などはネット上の住所にあたる「IPアドレス」から発信元を特定。PCの持ち主の男を聴取したが、捜査は終わらなかった。PCをウイルスチェックし、家族の利用履歴も調べて解析まで行った。偽計業務妨害容疑で書類送検したのは今年1月末。幹部は「裏付け捜査が増えた」とこぼす。

 同庁は5月の大型連休明けから、ネット上の犯罪予告事件は捜査1課でなくサイバー犯罪対策課が初動捜査を担当。神奈川と大阪ではサイバー担当部署を「課」に格上げ。三重の「サイバー犯罪対策室」も増員し、ほぼ全てのネット犯罪で捜査にあたる。

 司令塔の警察庁も昨年11月に「不正プログラム解析センター」を新設。ウイルスの解析は各警察本部が個別に行っていたが、情報をデータベースで一元管理し、照会に応じる態勢に改めた。ただ、毎日10万種以上が増殖しているとされ、警察幹部は「民間のウイルス対策会社の情報に比べれば遠く及ばない」とし、連携が課題だと指摘する。

 大阪府警は5月、協定を結んだ情報セキュリティー会社7社に対し、業者になりすまし代金を詐取する「偽サイト」のURLの情報提供を始めた。ある社の担当者は「偽サイト情報は少なく対策が難しかった。非常に有意義だ」と歓迎する。

 神奈川県警は4月からセキュリティー会社社長を非常勤職員で採用。幹部は「収集できる情報が増えた」と評価する。警視庁も昨年10月、セキュリティー会社などとの間で「コンピュータウイルス関連犯罪協議会」を設置。会員企業は「(ウイルスなどの)情報が提供され、解析する機会が増えた」と話す。

 ただ、線引きには難しさも残る。情報セキュリティー会社「ラック」の武智洋・セキュリティ事業本部担当部長は「収集して得た手口や調査技術は助言できても顧客情報は一切明かせない」と話す。一方で警視庁のある幹部は「捜査上の秘密をどこまで話していいのか」と戸惑いを隠さない。

最終更新:6月11日(火)0時10分

毎日新聞

 
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