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【社会】

都平和祈念館「早く建設を」 東京空襲 体験者 進む高齢化

平和祈念館建設を求め、空襲体験などを話す小森香子さん=東京都豊島区で

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 東京空襲の資料を展示し、犠牲者を追悼する「東京都平和祈念館(仮称)」の建設を求める戦争体験者たちが、十四日告示の東京都議選に注目している。展示内容をめぐる都議会の対立で計画が凍結されて十四年。高齢化した体験者らは「いつまで生きていられるか分からない」「議論を始めて」と訴える。 (橋本誠)

 「無関心なんです。もう済んだことと思っているのでは」

 平和祈念館の「建設をすすめる会」は、都議選に候補を擁立する十の政党・政治団体にアンケートを出したが、回答が来たのは四団体だけ。代表世話人の詩人小森香子さん(83)はため息をついた。

 一九四五年三月十日の東京大空襲の後、豊島区の根津山で黒こげになった丸太のような遺体がトビ口でトラックから下ろされ、埋められるのを見た。自宅は同年四月の空襲で全焼。「広島や長崎のような施設がないのはおかしい」と、一九七〇年代から建設運動に参加してきた。

 都は九八年に建設予算案を都議会に提出。しかし、日本の加害の歴史などの展示内容をめぐり、都議会が紛糾。都財政が悪化していた時期でもあり、九九年の「都議会の合意を得た上で実施する」という付帯決議で計画は凍結された。

 二〇〇一年に墨田区の都慰霊堂の敷地内に追悼碑は造られたが、都民が寄贈した資料約三千五百点や空襲体験者三百三十人分の証言ビデオは都庭園美術館(港区)の倉庫に保管されたままだ。

 アンケートに答えた共産、生活者ネット、社民、みどりの風は建設に賛成する。しかし都は付帯決議を尊重する方針を変えない。世話人の柴田桂馬さん(83)=北区=は「都議会は合意を得る努力をしてほしい」と求める。

 空襲被害者約十万五千人の遺骨が眠る都慰霊堂は、もともと関東大震災の納骨施設。東京空襲犠牲者遺族会は今年一月、「独立した公的施設」の整備を都議会各会派と都に要望した。東京大空襲で孤児になった金田茉莉さん(78)=埼玉県蕨市=は「祈念館を待ちながら亡くなった孤児もいる。戦争を知らない世代の都議が多くなったが、空襲のことを知ってほしい」と訴える。

 <自治体の平和施設> 被爆地の広島、長崎市や沖縄県は追悼施設や公園と一体化した資料館を運営。大阪府・市や川崎、兵庫県姫路市も空襲被害を伝える施設を設立している。東京では平和祈念館計画の凍結後、募金で「東京大空襲・戦災資料センター」(江東区)が造られ、市民の手で運営されている。

 

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