玄海原発:1号機存続の判断に疑問の声
毎日新聞 2013年06月11日 07時01分(最終更新 06月11日 07時47分)
◇15年秋には「40年廃炉」期限
九州電力玄海原発1号機(佐賀県玄海町)が発電しないのに、2号機と共に修繕費に年間約100億円がかかることが判明した。かといって、九電は早期再稼働にも踏み込めないでいる。改正原子炉等規制法で定める「40年廃炉ルール」の期限が2015年10月に迫り、経営上の「お荷物」のようにも見える1号機に廃炉の選択肢はないのか。九電は原発の経済的な優位性を唱えて存続に望みを託すが、識者からは疑問の声が出ている。【関谷俊介】
「全く考えていない」。九電の複数の幹部は1号機の廃炉についてそう主張する。原発の運転を原則40年とする「40年廃炉ルール」はあるものの、原子力規制委員会から例外規定の20年延長を認められれば、火力に比べ「原発は引き続き競争力のある電源」との見方が根強いためだ。
九電によると、火力発電の単価は1キロワット時当たり11円以上。原発は7円台半ばで、新規制基準の安全対策費を講じても1円程度の上乗せにとどまり、なお優位だと説明する。
廃炉費用の問題もある。電気事業法に基づき費用を積み立てているが、1号機廃炉には358億円が必要と見積もり、15年度末時点で36億円不足する。瓜生道明社長は「廃炉にしろという声もあるが、財務の手当てがないと難しい」と強調する。
一方で、九電は13〜15年度の運転計画で1、2号機の再稼働を想定していない。なぜ速やかな再稼働を目指さないのか。川内原発(鹿児島県薩摩川内市)や玄海3、4号機の再稼働を優先しており、「玄海1、2号機を検討する余裕がない」(幹部)と説明する。
半面、古い設計の玄海1号機を再稼働させるには、他の原発より新規制基準のハードルが高い。膨大になるとみられる安全対策費を投じたところで、2年4カ月後に迫る40年廃炉ルールが適用されれば無駄となる。規制委が例外規定を認めるかや、安全対策を講じて採算が取れるか見極めるまで、修繕費をつぎ込んででも再稼働か廃炉かの判断を先送りし、運転停止のまま延命させたいとの思いも見え隠れする。