Updated: Tokyo  2013/06/11 09:16  |  New York  2013/06/10 20:16  |  London  2013/06/11 01:16
 

食卓に欠かせない大豆、商社が調達確保に奔走-南米・アフリカ

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  6月11日(ブルームバーグ):総合商社が豆腐や納豆、味噌などの原料となる食用大豆の調達を強化する。三井物産 がブラジルの自社農場で生産を増やすほか、伊藤忠商事 はモザンビーク、双日 はウクライナからの輸入を始める。現在、輸入の大部分を依存する北米では生産が減少傾向にある上、価格も上昇。調達先の確保が課題となっている。

日本では食用大豆に非遺伝子組み替え大豆を使用している。しかし大豆価格の上昇を背景に除草剤の散布が少ないなど手間をかけずに効率的に生産できる遺伝子組み替え大豆を生産する傾向が世界的に強まっている。米農務省によると、2000年に54%だった遺伝子組み換え大豆の生産比率は12年には93%にまで上昇。非遺伝子組み換え大豆を調達するために農家に支払う割増金は高騰しており、安定確保は難しい状況だ。

三井物産・穀物トレーディング室の佐藤幹央大豆チーフトレーダーは「非遺伝子組み換え大豆の供給力は世界的に細くなっており、分散して買い付けないと中長期的な安定供給は出来ない」と指摘する。

そこで北米以外の調達先として力を入れるのが完全子会社マルチグレインがブラジルで展開する農場での生産。佐藤氏は「マルチグレインから日本への非遺伝子組み換え大豆の供給は需要がある限り増やしていきたい」と話す。

モザンビークやウクライナから調達

ブラジルとほぼ同じ緯度に位置するアフリカのモザンビーク。伊藤忠商事は同国から非遺伝子組み換え大豆の調達に向けた取り組みを進めている。大豆を使用する日本の食品メーカーなどと共同で種子を開発し、昨年7月から現地で試験栽培を始めた。

事業を担当する油脂・穀物製品部の天野敏也・大阪食糧課長によると、14年にも日本への輸入を開始し、15年には5000-1万トンまで拡大したい考え。「日本への供給拠点となり得ると同時に将来はアフリカ国内でのビジネスも行える」と期待を寄せる。

双日も子会社を通じてウクライナからの調達を始める。現地や米国の穀物企業と提携し、まずは年内に数百トン規模で輸入する。2-3年後には5000トン程度まで調達量の拡大を目指す。

兼松 は昨年末に米オハイオ州で非遺伝子組み換え大豆の集荷事業を買収した。米国やカナダの既存取引先からの買い付け強化などで、日本への輸入量を現在の年間9万トンから3-5年後に14万-15万トン規模に増やす。農産油脂部の森田克己部長は「食品大豆はメインの一つの商品として今後もしっかりと取り組んでいく」と話す。豪州からの調達の検討も同時に進めている。

農林水産省によると、11年度の国内の食用大豆の需要量は95万トン。そのうち8割弱に当たる約74万トンを輸入した。米国とカナダで輸入量の9割以上を占める。

日本では遺伝子組み換え食品の表示義務があるなど、食の安全に対する意識は高い。5月末に米オレゴン州で未承認の遺伝子組み換え小麦が発見されたことを受けて、日本や韓国が一部米国産小麦の輸入を停止するなど波紋も広がっている。

農林中金総合研究所の藤野信之主席研究員は「米国やブラジル、アルゼンチンでも直接人間が口にするパンの原料となる小麦については遺伝子組み換えの種子は用いられていない。大豆製品を副食物として直接口にする日本にとって非遺伝子組み換え大豆を安定調達することは重要だ」と指摘している。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 鈴木偉知郎 isuzuki@bloomberg.net;東京 Aya Takada atakada2@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:大久保義人 yokubo1@bloomberg.net

更新日時: 2013/06/11 06:00 JST

 
 
 
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