小室氏は千葉大学時代の平成20年度~22年度にわたり、厚生労働省の「科学研究費補助金」を受けていた。平成20年に小室氏が世界的な科学誌『ネイチャー』に発表した論文についても、ネット上では不正が指摘されており、同論文には、厚労省から科学研究費を受けていた旨の記載がある。厚労省・研究開発振興課の担当者は次のように言う。
「小室氏には、平成20年度は、6500万円、21年度は5561万6000円、22年度は5454万5000円の補助金が支払われています。これは国税です。万が一、不正な論文に使われていたとしたら返してもらわなければならない。千葉大学には調査をするように伝えます」
一方、日本高血圧学会の理事長、堀内正嗣>氏も、臨床高血圧フォーラムで数多く発言し、存在感を示していた。本誌の前号の報道を受け、自身の名前と理事長職で抗議書を送ってきた人物だ。高血圧学会のトップでありながら、バルサルタンの広告記事で薬効を喧伝した張本人である。日本医学界の会長、髙久史麿氏は前日に行われた会見で本誌の取材に、「(堀内理事長が)宣伝活動をしているのは事実。大いにしていた。(宣伝は)もう止めてもらいたい」とし、「道義的な責任は免れない」と指摘した。
本誌記者は堀内氏に「反論も含めて取材を受けて下さい」と取材を申し込んだが、「文書で送って下さい。それからです」と繰り返すのみだった。
医療ジャーナリストが言う。
「ノバは高血圧学会の幹部4~5名を広告塔にして、ボロ儲けしたんです。医療専門誌でお偉方がバルサルタンの薬効を宣伝する度、医療誌は彼らに『原稿料』の名目で謝礼を払っていた。一本10万円ほどでしょうか。それも元を辿れば、大部分が国民が払った保険診療費です」
前出の南淵氏が言う。
「一連の論文不正問題の原因は、日本のアカデミズムの構造的な問題にあります。今の日本の医学界は『論文至上主義』に陥っていて、とにかく論文を多く書かないと出世ができない。多くの教授は、教授になった瞬間に、専門家からジェネラリストへの変節を強いられ、興味のなかった分野にも手を出すことになる。京都府立医大の松原先生も、東大の小室教授もそんな流れに押し流されたのではないでしょうか」
前代未聞の製薬スキャンダルは、どんな決着を迎えるのだろうか。
「フライデー」2013年6月14日号より
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