米デトロイト市に忍び寄る財政破綻の日

 【デトロイト(米ミシガン州)】米ミシガン州デトロイト市の緊急財務管理者は、市職員の労働組合と市の債権者に呼びかけ、6月中旬に会合を開く計画だ。これは数カ月以内にも連邦破産法の適用申請を行う準備が整いつつあることを物語っている。

 ミシガン州のリック・スナイダー知事によって3月に緊急財務管理者に任命されたケビン・オーア氏はその会合で、市の負債についての詳細な再編計画を提示する予定だ。オーア氏によると、市の負債額は170億ドル(約1兆7000億円)に達する。

 オーア氏は向こう数週間をかけて、市で最大級の規模となっている職員の労働組合や年金基金、債権者、市債保有者らに対し譲歩を求めていくとみられている。こういった動きで破産が回避されるのか、それとも裁判所の監督の下に進められる再建へ向けて踏み出すのかは不透明だ。

破産法適用申請が近い米デトロイト市の保有資産

 連邦破産法の適用申請がされれば、米国の自治体の破産としては負債額で過去最大規模となる。これまでの最大はアラバマ州のジェファーソン郡だった。かつては産業の中心地として栄えたデトロイトの景気は数十年間にわたり低迷した。米国勢調査局によると、市の人口は2000年から10年までの間に25%減少し、約70万人になった。1950年には200万人近くが住んでいた。

 住民や企業の郊外への流出、州の補助金の減額、さらには不動産価値の下落などで窮地に追い込まれたデトロイトは市の運営費や、退職した職員のための年金やヘルスケアといった長期的な負債の支払いのために多額の借金を重ねていった。

 08年以降、市は税金や他の収入で得られる資金より、平均で年間1億ドル余り多く費消してきた。

 スナイダー知事は今年3月、州法の下に市の運営と労働協約の解消、市の資産の売却といった権限を持つことになる緊急財務管理者にオーア氏を任命した。就任 1期目のデーブ・ビング市長は先月、次の選挙には立候補しない意向を表明した。市議会議員の過半数も同様に立候補しない意向を示している。

 事情に詳しい関係者によると、市は推定で3000万ドルを超える負債の支払いを抱え、その支払期限が6月15日になっているという。オーア氏は手元資金を温存しておくため、この支払いを実行しない決断を下す可能性があると同関係者は指摘する。

 オーア氏はインタビューの中で、負債の支払期限が近づいていることを認めたが、その金額や、市は支払う意思があるかどうかなどについては言及を避けた。

 デトロイトは4月の時点で、手元に6400万ドルの資金があるものの、年金など2億2600万ドルの支払いを抱えており、市は支払いの延滞を余儀なくされている。オーア氏は先月の報告書でこう述べた。

 先週後半に行われたインタビューの中でオーア氏は、市の悲惨な財務状況と、より良い負債の支払い条件の必要性について、破産裁判所の外で「成熟した冷静な議論を持つための、少なくともその試みとして」今月中に債権者らとの会合を呼びかけると明かした。裁判所ではなく、会合で解決する可能性は半々だとオーア氏は述べた。

 オーア氏は職員の労働組合に先週、譲歩に関する話し合いを持ちたいという旨の書簡を送り、一部の組合は参加の意思をみせていると述べた。

 オーア氏は「破産させるかどうかの問題は自分ひとりにかかっているわけではない」と述べ、仮に2者か3者の大きな債権者がもっと良い条件で合意すれば、市はこういった動きを回避するかもしれないと付け加えた。 

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