勇気とは恐怖心に抵抗することである。これは恐怖を全然知らないということではない。恐怖をわが物にするということである。人間にはどこか臆病なところがあるからこそ「大胆」というのがほめ言葉になるのだ。ノミがいい例だ。もし恐怖の欠如が勇気であるならば、ノミこそは神の創造した一番勇気のある生物である。相手が眠っていようと目覚めていようと、ノミは平気で攻撃をかける。ノミにとってわれわれ人間に手向かうことは、赤ん坊が全世界の軍隊に手向かうようなものだが、ノミは一向気にしない。ノミは昼も夜も危険と死の真っ只中にいるが、千年も昔にあった、大地震が起こる前の、町を歩く人間のように、平気な顔である。クライヴやネルソンやプットナムを「恐怖の知らぬ者」として数えあげる場合、こうした連中に、もう一つノミをつけ加えることを忘れてはならない。そして先頭に立たせることだ。
いくら知恵があっても、これを使う勇気がなければ何の役にも立たないように、いくら信仰が厚くても、希望がなければ何の価値もない。希望はいつまでも人とともにあって、悪と不幸を克服するからである。
luck(幸運)にPが加わってpluck(勇気)となれば、鬼に金棒である。