メガネ(眼鏡)業界に異変あり!
不況とはいうものの「メガネ業界全体が冷えてる」のだそうです。
「何年か前の単価の下落がスタートでしょうか?価格低下のスパイラルを起こしている。」
こう言うのは国産メガネ大手のマネージャー氏。
確かに単価は上がらない。「不況だ」ということで消費者心理が購入まで至らない。
「眼鏡に関しては、ちょっと我慢しようか」という消費者の我慢ムードもある。
しかし、製造(メガネの産地である福井県鯖江)が冷えてるわけではなく、
そこそこに活況を呈している、という。
「メガネの製造」のほうは順調で「メガネ販売」のほうは単価が上がらず冷えている、とは不思議な感じだが、「メガネ販売」が苦しいという話はよく耳にする。いったいメガネ業界に何が起きているのか気になるところだ。
「売り上げ一番」はメガネの『パリ・ミキ』
メガネの『パリ・ミキ』が630億円くらいの売上。店舗も1020店ほどで、この売上1位は10数年来変わらない。2位は『メガネトップ』。業界3位だったが、2位の『メガネスーパー』を抜いて2位となった。『メガネトップ』は『眼鏡市場』という名前で店舗数を増やし、今年は530店舗。
『メガネスーパー』、『ビジョン』、『愛眼』とあるなかで、唯一増収増益を続けている。
『メガネトップ』の売り上げ増の秘密は2年ほど前から「ワンプライス」という新しい形態のショップをどんどん増やしていったこと。ヤングの客層を切り捨てて、40代以上をターゲットに売り上げを稼いできた、という。
「ワンプライス」は「市場の先食い」にあたらない!?
今までの常識では、年配の方のメガネになると「累進多焦点レンズで遠近両用レンズ」を使う。
フレームとレンズを買うと、どうしても4〜5万円という値段。それを18,900円という、どのレンズを入れても「ワンプライス」としたことで「お客様の好評」を得て売り上げを伸ばしている。おかげで、『眼鏡市場』が出店した近隣の「一般のメガネ店」や他のチェーン店から「売り上げ」「顧客数」ともに減少して迷惑している、との声があがっているほどだ。
売上2位の座をあけ渡した『メガネスーパー』
一時期の『メガネスーパー』は破竹の勢いで伸びていた。他社からの「やっかみ」も相当に強く、当時の鯖江の大手さんは『メガネスーパー』の子会社が鯖江の「特に安いメーカーからトラック横付けで品物を集めてきて大安売りで売っている」との電話でのタレこみがあったほどだった。しかも電話の主は「レノマ」等ブランドもの「偽ブランドには困りもの」と電話口で嘆いてみせた。とかくの噂の『メガネスーパー』でさえ「出る杭は打たれ」ながらもメガネ業界「販売2位」で頑張っていたのに『メガネトップ』の『眼鏡市場』にはかなわなかったというのだから「ワンプライス」のほかになにか特別な成長の秘密でもあるのだろうか?と思いたくなる。
客単価を上げたい大手チェーン店
業界事情通氏は『メガネスーパー』のみならず、最近の大手チェーン店は、顧客数が伸びないならと「一個当たりの利益単価を上げる」傾向が強く、「お店オリジナルブランドづくり」ということで福井・鯖江に対してOEM生産を積極的に増やしている、というのが実態、という。
しかし、結局のところデザインはお店の方でやるわけではなく、基本的には「こういうものを作りたい」と投げて、福井のデザイナーのデザインを採用・発注する、というかたちになっている、そうである。
海外発注で生産コストを下げる
日本の福井県鯖江なら技術力が高いからまだ良いが、最近の3〜5年は「国内では利益がとれない」ということで中国発注へ切り替えたところが非常に多い。
だから、お店にある商品も、国産のしっかりとしたメーカーの商品と中国で作っている商品とでは、商品の質にバラつきがある。「1店舗のお店の中で中国製と国産が混在」していますから「消費者は値段につられると、安い中国製を選んでしまいかねない」と心配する向きも多い。
そうした危惧を感じたメガネ店も多かったのだろう・・・
食品の「生産地証明」のように、メガネフレームは2年ほど前から「原産地表記」をすることになった。
「ロウ付けでフレーム枠」の形にするところまで製造した国を「原産国」として表示しなさい、という決まりができましたが、メガネ業界は「今までグレーな部分が通用してきた業界」なので、まだ原産地表記を「入れない」メーカーもあります。私らが見て「これは間違いなく中国製」と思うものが原産地表記が入っていない・・・と事情通氏。
業界団体の公取部門は「チェックしない」
「原産地表記」を入れなくても罰則がなければ「原産地表記」をいれないほうが「国産の値段で売れる」のだから儲かる。何も知らない「消費者だけが騙される」という図式。「消費者も納得している」なら問題はないのですがオープンにしないのはフェアではない。
「レンズは韓国」「フレームは中国」3プライスショップのパイオニアは『Zoff』
「ポロクラブ」「ガリレオクラブ」についで、2001年2月に『Zoff』1号店が下北沢にオープンした。
インターメスティックの上野 照博社長はデパートの伊勢丹のバイヤーから「5000円のワンプライスでは"安物"というイメージになるので、3プライスくらいにしたほうがいい」というアドバイスをもらい、1万円を超えない範囲で「5000円」「7000円」「9000円」の3プライス価格に設定することを考案。「レンズは韓国、フレームは中国から開発輸入している」ことを初めから公表したうえで『Zoff』をたちあげ、成功した。
『Zoff』の3プライスショップの功績は、産地「中国」「韓国」とわかっていても、デザイン的に優れていれば「よい」というお客様の層を新たに確立したことでしょう、と事情通氏。
群馬の『JIN’S(ジンズ)』の田中仁社長は『Zoff』の1号店出店の2ヶ月後に『JIN’S(ジンズ)』1号店を出店。田中仁社長は「韓国でメガネという商材に出会ったとき日本では3、4万円するのに3000円でつくれる」ことに感動を覚えたそうで、はからずも『Zoff』も『JIN’S(ジンズ)』も同じ時期に同じことを考えていた。
『JIN’S(ジンズ)』もフレーム製造は中国製であることを堂々と公表している。
需要の「先取り効果」
3プライスショップのパイオニアだった『Zoff』に続けとばかり、その後「メガネトップ」の『アルク』、「メガネスーパー」の『ハッチ』など、セットプライスショップがたくさん誕生する。
メガネの単価は下がり、購買人口が減り、市場が縮小していく。それはそうだろう、いままで3年に1回の買い換えであったメガネが「価格の引き下げ」効果で、需要の先取りが増えたのだから。
とはいえ、『Zoff』と『JIN’S(ジンズ)』は3プライスショップとして経営がきちんと成り立っている。
問題なのは、後から追いかけてきたチェーン店系列の「3プライスショップ」であり「売り上げ」は非常に厳しい、と聞く。
なぜ売り上げは厳しくなったのか
特に、この1年間はチェーン店が「3プライスショップ」の形態をどんどん取り入れて200店舗の中の50店舗を「3プライスショップ」の店舗にしましょうと、やる。 最初は比較的うまくいくが、チェーン店舗と「3プライスショップ」向けの商品企画は自社の中でなかなか棲み分けができない。当然ながら「3プライスショップ」専門でやっているチェーン店と比べると商品にデザイン的な差が出てきた。
お客のニーズは常に変化する
国産メガネメーカーは2万円以上の商品がメインでした。それが「3プライスショップ」の出現で「1本しか買えなかったお客さん」が2本も3本も買える。「3プライスショップ」の眼鏡を何本もかけていると、もうちょっといいメガネが欲しくなる。常識に変化がでてきて若い人がメガネを何本も持つようになった。何回もかけ直すことによって、どんどんクオリティの高いものに魅力を感じる若い人達が増えてきて購買客数は逆に増えた。(国産メガネメーカー)
眼科医のいない「メガネ店」に高価な検眼機器
ところで、「ワンプライスショップ」「3プライスショップ」でメガネを作るときの「検眼」はどうしているのでしょうか?
眼科のお医者様の団体『日本眼科医会』では「メガネを作るときは、必ず『検眼』は眼科医で行ってください。その処方箋をメガネ店に渡してメガネを作ってください」といいます。
「3プライスショップ」のお客さんに聞いてみたら、「メガネ店の店員さんが『検眼』をしてくれた」そうで「眼科医」ではないけれど「街の『眼鏡店』でも、上手でした」という感想です。
お医者さんがいないのに高価な検眼用の光学機器が置かれているメガネ店。眼科専門医が使う機器を上手に操作するベテランの店員。店員さん達はどこで光学機器の操作を勉強するのでしょうか。
私たち消費者は『検眼』をする本当の目的は「なぜものが見えにくくなったのか」だと思いましたが、どうやら本当の狙いはメガネを作るための『検眼』らしいですね。メガネ店で行っているのはいわゆる「度数合わせ」でしょう。
最近、気がついたのですが「インターネットなどでメガネを選んで通信販売で買うというのが流行しています」。しかし、メガネはサングラスではないので「インターネットで買うことには疑問があります」。度数はコンタクトレンズのデーターをしらせてくれれば、その度数にあわせます、というのですが、メガネは度数が合ってても掛けてみないと、きちんと正しい位置にレンズの中心がきているのか、ズレていた場合、必要な「フレーム調整」もできない、ということで、健康被害の出る恐れはないのでしょうか。心配です。
■メガネを作るなら『検眼』は眼科専門医で■
「眼科医」にメガネを作りたいわけを「最近ものがはっきり見えなくて」などと相談しますと、
◆屈折検査
◆角膜曲率半径測定
◆細隙灯顕微鏡検査
◆眼底検査
◆眼圧測定
等の検査をしてくれます。
『検眼』は単なる視力検査ではないので視力の落ちた原因をさぐるために最低5項目は調べる必要があります。
視力が落ちる原因が屈折異常だけだったら「メガネの処方箋」を作ってもらって、その処方箋をメガネ店へ。
メガネができたら「そのメガネ」をもって眼科医のチェックをうけて調整すべきところがあれば、処方箋に再度書いてもらって、メガネ店で直してもらう。
理想を言えば2回か3回そういうことをやれば自分にピッタリのメガネが手に入る、というわけです。
しかし、この「正しいメガネの作り方」「正しい検眼」をどれほどの消費者が実行しているでしょうか?
メガネをかけている人の96.3%は不適です。
眼科のお医者様の団体『日本眼科医会』の先生方が、街中でメガネをかけて歩いている人達に声をかけて「眼科検診車」でメガネが適正かどうか検査したところ「96.3%の人が不適正なメガネをしていた」という結果が出た。
★その内訳は
フレームのフィッティングが原因…54.5%
(傾斜角のくるい、レンズ中心のずれ等が起こっているもの)
★瞳孔間距離とレンズ中心間距離の不一致…19.2%
★その他…26.3%
ここで大事なのは検査にあたった先生方が、検査した全員に「どちらで検眼されましたか?」とアンケートを取っていること。すると、85%がメガネ店と答えたということです。
メガネ1本が高価で「大切なもの」との認識があれば眼科専門医に検眼してもらい、ベテランのメガネ店の店員さんに相談しながら良いメガネを作ってもらうというのが
ベストの方法ではないでしょうか。
“どんどん捌かなきゃいけない”が問題を生む
ところが、適正な価格で適正利益を得ている街のメガネ店はお客さんとじっくりお話をしてメガネのフィッティングに時間がとれるのですが、すぐに「お渡しできます」「30分で終わります」というのを“売り”にしているところは、検眼機で測ってそのデータだけでメガネを作ってしまう。(昔からある問題ですが、)検眼機で測っただけだと度数が強めに出てしまいますから過矯正のメガネになってしまいます。きちんと検眼機で測った後で、店員の人が調整して強めのところまで持って行って、これでどうですか、逆に弱くした時にはどうですか、と。もう1段階弱くしてどうですか、と。だいたい3段階くらいでお客様の好みをきちんと聞いたうえで最終的に加工するのが良心的です。
ところが、質の低いメガネ店は、機械だけで測って「どんどん捌かなければならない」ということで強いレンズを使う。これが目のトラブルを生みます。だから、眼科専門医に検眼してもらって、造ったメガネを再度、眼科専門医にチェックしてもらう方が良い、のです。
良いメガネ店は時間がかかるもの
技術レベルが高く、専門性が高いメガネ、レンズが求められていた時代は『HOYA』『ニコン』といったハイレベルで高級な「メガネ」や「レンズ」がステータスであり、購入した消費者も優越感を楽しみ、なぜか安心していられたものです。
それが、中国や韓国に技術レベルで追い付かれ、国産のメガネ製造技術とあまり差がなくなると、中国や韓国などに存在を脅かされることになります。
まさしく、この数年がそうだったように日本のメガネ産業はメーカーの地盤沈下、販売優先の新興勢力によるダンピングまがいの商法に席巻されました。
しかし、ここまでくると、日本のメガネ・レンズ産業の復権は不可能に思います。
かつてアメリカが生産力と技術力で世界経済を席巻した時代に、日本の通産省は先進国に追いつけ追い越せと応援してくれました。
そのおかげで、トヨタは世界一となり、敗北したGMはアメリカ政府所有の企業となりました。
「蟻の一穴」から日本が崩れてしまう前に手を打たなければ未来はありません。