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新しい人権は、13条の「個人の尊重」「幸福追求権」、21条の「表現の自由」、25条の「生存権」をはじめとする憲法条文の解釈によって導き出されると一般的に考えられてはいるが、憲法が21世紀日本の骨格を成すべきだと考えると、より積極的に明示すべきとの主張がある。加憲の考え方である。 |
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新しい人権を憲法上の権利として承認できるかどうかは、特定の行為が個人の人格的生存に不可欠であるばかりでなく、その行為を社会が認め、他の基本的人権を侵害する恐れがないかなど、慎重に判断すべきであり、権利のインフレを招くべきではないとの強い主張、またそれらは立法において成すべきだとの主張があり、新しい人権を考える場合、これを踏まえる必要がある。 |
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時代の変化は極めて激しいものがあり、迫られる課題も多い。21世紀の日本をいかに築くかという未来志向の憲法論議に立った場合、むしろ憲法に明記することによって事前の人権保障を可能とし、時代の変化に対応した積極的な立法措置を可能にすることが望ましいのではないか。 |
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環境権は「良好な環境を享受し、国家及び国民が環境保護に努める」といった趣旨の権利(責務)である。13条や25条によって、それが読めるという解釈もあるが、かつての人間中心主義ではない自然との共生も含んだエコロジカルな視点に立った環境権を定めるべきである。 |
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IT社会の進展するなかで、プライバシーの権利を守ることが必要になっている。私事に属する個人情報を保護するということは当然として、より積極的に「自己情報をコントロールする権利」として確保することが検討されることは意義がある。また「知る権利」が、21条の「表現の自由」から導かれるとの主張があるが、自由権から発している「表現の自由」と、政府などの情報開示を求める「知る権利」とは異なるとの意見もあり、今後の検討課題である。 |
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なお「権利」と「義務」で書かれた憲法に、新しい「責任」の概念を入れて、環境の保護や国民への情報開示は国などの「責任」として考えるとの新しい視点での指摘もあり、注目される。 |
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13条の「個人の尊重、幸福追求権、公共の福祉」のなかでも、生殖医学、遺伝子技術の発展に伴う生命倫理のあり方については、現憲法には条文はないが、人間存在の本質にかかわる問題が内包されるだけに、どう考えるかは検討課題である。 |
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26条に「教育を受ける権利・受けさせる義務」がある。敗戦直後と現在では、高校・大学の進学率をはじめとして大きく教育環境は変化している。憲法学上、26条については、論点となることはほとんどないが、生涯にわたっての教育が大切となっていることをはじめとして、より積極的な人間主義的教育観を主張する声もある。 |
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32条に「裁判を受ける権利」がある。資力に欠ける国民が民事法律扶助を受ける権利を追加することによって、この条項をさらに強化することが必要であるとの強い主張があった。 |
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現憲法はもっぱら刑事被告人の権利を保護しているが、犯罪被害者の人権については触れられていない。犯罪被害者の精神面も含めた権利保障や刑事手続きへの参加・関与などを求める声が上がっている。犯罪被害者といっても、その態様は多岐に及ぶものであり、法整備も一定の前進はみられるが、憲法上どうするかは検討課題の1つである。 |