本土復帰41年:沖縄、独立論再び
毎日新聞 2013年05月15日 15時47分(最終更新 05月15日 15時56分)
沖縄で、独立論が再び語られ出している。戦後度々、議論されてきたが、酒席で気炎を上げる「居酒屋独立論」とやゆされることもあった。本土復帰41年になる15日には、独立を前提とした研究学会が発足する。県民の間に議論が広がるのか。【平川哲也】
政府主催の主権回復記念式典が3日後に迫っていた4月25日夕、地元紙・琉球新報などが那覇市で開いた、政府の式典を考えるフォーラムで「独立」がテーマの一つとして語られた。司会の地元民放アナウンサーが「沖縄の民意が反映されず、独立論の主張が出始めている」と話すと、石垣島出身の松島泰勝・龍谷大教授(島嶼(とうしょ)経済論)は「英国のスコットランドでは独立の是非を問う住民投票が来年あり、スペインのカタルーニャ地方も独立を求める動きがある」と紹介した。
独立論再燃の背景には、オスプレイの沖縄配備強行や普天間飛行場の名護市辺野古への移設、そして政府による記念式典開催(4月28日)など、沖縄の民意が顧みられないことへのいらだちがある。
15日に発足するのは「琉球民族独立総合研究学会」。松島教授らは、民族の自己決定権を保障した国連の国際人権規約に基づき、研究発表や国際機関への働きかけで独立を目指すという。「国際法や諸外国の事例を研究し、議論の積み重ねと実践で独立につなげたい」と意気込む。
一方、琉球新報が11年11月に行った県民意識調査(回答数1137)では、今後の日本における沖縄の立場について「独立すべき」と答えたのはわずか4・7%。本土復帰運動のリーダー役だった吉元政矩(まさのり)・元県副知事は、道州制の中での沖縄単独州の実現を提唱する。学会発足について「現実路線として私が目指すのは独立でなく自治権拡大」と距離を置いたうえで「学問として独立の研究や論議を重ねるのは『沖縄は自立できるんだ』との自信や誇りを県民が取り戻す場になりうる。その意味で今後の展開に注目している」と話す。
◇沖縄独立論
沖縄本島を中心とする琉球は、日本に併合される1879年まで王制を敷く国だった。独立論は、県民の感情を逆なでするような出来事がある度に浮上。米軍基地の固定化が明白となった1972年の本土復帰前や、米兵による95年の少女暴行事件の時も論じられた。ただ中央政府との連携で振興策を練る政党もあり、政治的な広がりは乏しかった。