「松原論文は、降圧以外の薬効を目立たせるため数字が作られた可能性が高い。程度の差こそあれ、慈恵医大や滋賀医大、千葉大でも降圧以外の薬効を示唆する論文が発表されており、そのすべてにノバ社の社員『S』氏が生物統計の解析担当として携わっていました。『S』は非常勤講師を務める『大阪市立大』の肩書を使っており、ノバ社の社員という身分を隠していた。完全な利益相反です。やったやらないは水掛け論になるが、どちらか、もしくは双方がデータを作った可能性は拭えない。極論を言えば、臨床試験自体が行われていない可能性すらゼロではないのです」(医療ジャーナリスト)
バルサルタンが年間1000億円超の売り上げを誇るドル箱商品になったのは、冒頭のように、学者とノバ社、そして医療専門誌が三位一体となって、その薬効を大宣伝したからだ。『日経メディカル』に掲載されたノバ社の広告記事には、日本高血圧学会の幹部も頻繁に登場し、難解な専門用語を並べてバルサルタンの有効性を説いていた。自治医大循環器内科の島田和幸氏(日本高血圧学会・理事)の場合は、こんな表現だ。
「島田 (中略)ディオバンを使用した大規模臨床試験のエビデンス(編集部注・薬が効いた証拠)が、様々な一流医学ジャーナルに掲載されたわけです。(中略)臨床現場にも大きな影響を与えることになったと思います」(『日経メディカル』2012年3月号)
前出の医療ジャーナリストが言う。
「バルサルタンの発売10周年を記念して始まった『DIOVAN座談会』は2年連続で複数回企画されました。高血圧学会の幹部が集まり、『(バルサルタンによって)脳卒中が減ったというデータはインパクトがある』『バルサルタンが認知機能の低下を改善するとのデータが得られた』などと褒めちぎる内容です。ノバはメディアに広告費を払い、そのカネでメディアは学者に取材謝礼を払う。その記事を読んだ医者がバルサルタンを買い、その利益でノバがまたメディアに広告記事を打つ……。3者の間で利益が還流し、公正であるべき教授たちが広告塔として踊らされていたんです。松原氏や小室氏など、ノバの広告記事でバルサルタンの薬効を喧伝する教授たちは、陰で『サルタン星人』と呼ばれていた。ノバがバルサルタン関連で使った広告費は数億円に上るとみられていますが、彼らにとっては屁でもありません」
本誌は日経メディカルを出版する日経BP社にノバ社からの広告費などについて取材を申し込んだが、「当社としても今回の問題について取材中なので現時点でのコメントはない」という返答だった。
東京大学医科学研究所・上昌広特任教授は、次のように指摘する。
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