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「江戸しぐさ」から学ぶ相手への心配り


山田 仁(TOSS武蔵野 法則化千里の道)

相手尊重主義の精神を行動に具現化した「江戸しぐさ」。
「江戸しぐさ」の根底にある「相手への心配り」ができる子どもを育てる授業を行う。

1 200年前の江戸の様子を知る

200年前の江戸。
江戸は現在よりもずっと人口密度が高く、混み合っていました。
今と比較すると、これぐらい!
(グラフを見せる。)
庶民が生活した土地は非常に狭く、狭い範囲内で押し合いへし合い暮らしていました。
その当時、井戸もトイレも共用。隣の家の物音は筒抜けでした。

今の私たちの生活で考えると、様々なトラブルが起こりそうですね。
どんなトラブルが考えられますか。

トラブルをイメージできる画像を提示しておくと、子どもたちからも意見が出てくる。

子どもたちからは、次のようなトラブルが出てきた。
・けんか
・騒音被害

しかし、江戸の街では、トラブルは少なかったという報告が多数のぼっています。
いったい、どうして江戸の町は、トラブルが少なかったのでしょうか

その秘密が、この絵に隠されています。よーく、絵を見てごらん。
人々は、どこを歩いていますか。ズームアップ!

「江戸名所図絵」の中から、提示する。
・道の端を歩いている。

道の中央が空いています。何のためでしょう。

・ほかの人が歩きやすいようにするため。
・緊急事態に対応するため。

このように、争いごとやもめごとが少なくなる江戸庶民の癖とも言える行動様式があったのです。
現在では、「江戸しぐさ」と呼ばれています。
言ってごらん。
どんなものがあったのかその一部を見てみましょう。

2 「江戸しぐさ」の内容の一部を紹介する
(1)七三歩き

「七三歩き」。
道は、みんなの物であり、歩くのは端の三分。

(2)傘かしげ

「傘かしげ」。
雨の日にすれ違うとき、お互い傘を外側にさっと傾ける。
でも外側にも傾けられないような狭い場所ではどのようにしたらいいでしょう か。

ただ、やってもらうだけではなく、一歩つっこんで考えてもらう。
「なぜ、このようなことを意識するのか」を考えさせるようにするためだ。

なぜ、このようにしたのですか。

・ぶつからないように。
・しずくがかからないように。

お互いに相手の気持ちを瞬時に察して行動していたのですね。

(3)うかつあやまり

「うかつあやまり」
人混みで足を踏まれたら、踏んだ方はもちろん、踏まれた方も謝る。
どうして、謝らなければいけないのでしょう。

・踏まれるようなところにいたから。

トラブルを事前に察知し、それを回避できなかった自分の迂闊さを謝っているのです。
みなさんには、このような感覚、ありますか。
これ、できたら、かっこいいよね。

これが、江戸時代の「イキ」な行動だったのです。
「イキ」を漢字で書いてごらん。

行き・息・生き・活き・意気・域・粋などが出てくるだろう。

お互いにぴったり息があってこそ、「イキ」だったのですね。

3 江戸しぐさの項目について考える

今、紹介した「江戸しぐさ」。
この3つのしぐさは、何歳までに身につけておくべきものなのでしょうか。

これらは、江戸商人の基本とされたしぐさで、3歳から9歳までの間に身につけておくべきものでした。
このような項目がいくつあったと思いますか。 │

8000項目とも言われている。

8000項目も、覚えていたのでしょうか。

江戸しぐさは、「書くと俗化するので書くべからず」と代々申し送られてきました。
お互いに一歩ずつ自分を引き、相手のことを考え、世間を暮らしやすくしていたのです。
口は出さなくても、しぐさでその場にいい空気を作る。
かっこいいね。


4 江戸しぐさの根底を知る

このイキなかっこよさを伝えようと、様々なところで「江戸しぐさ」が見直されています。
駅のポスター、本、講演会、今の私たちに足りないものが「江戸しぐさ」だって気がついたんだね。

エスカレーターの乗り方・降り方、車のハザードランプ。現在でもイキなかっこよさを見つけることができます。

お互いに明日はあの世かもしれない。だから今日のおつき合いを美しく大切に生きていこうという考えがその根底にあります。
四文字の言葉で何と言いますか。

一期一会である。

相手の気持ちを一瞬にして感じ取り、すぐに行動にうつす。
みなさんには、そう言う人になってもらいたいのです。

《参考文献》
「商人道『江戸しぐさ』の知恵袋」(越川禮子 講談社)
「身につけよう!江戸しぐさ」(越川禮子 KKロングセラーズ)
「江戸の繁盛しぐさ」(越川禮子 日本経済新聞社)
「江戸しぐさ講 浦島太郎からのおくりもの」(江戸の良さを見なおす会 新風社)
「江戸しぐさ 一夜一話」(和城伊勢 新風社)
「『抜く』技術」(上原春男 サンマーク出版)
「江戸商人の知恵嚢」(中島誠 現代書館)
「『江戸しぐさ』完全理解(越川禮子・林田明大 三五館)
「今、伝えたい、子育ての知恵」(伊達松風・越川禮子)
「江戸の遺伝子 いまこそ見直されるべき日本人の知恵」(徳川恒孝 PHP)
「マンガ版『江戸しぐさ』入門」(越川禮子 三五館)
「暮らしうるおう江戸しぐさ」(越川禮子 朝日新聞社)
「子どもが育つ江戸しぐさ」(越川禮子 KKロングセラーズ)
「美しい姿勢と立ち居振る舞い 小笠原流礼法入門」(小笠原清忠 アシェット婦人画報社)
「武士道」(新渡戸稲造著 矢内原忠雄訳)
「『自然』概念の形成史」(寺尾五郎 農文協)
「下流社会 新たな階層集団の出現」(三浦展 光文社新書)
「マイホームレス・チャイルド 下流社会の若者たち」(三浦展 文春新書)


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