日本維新の会共同代表の橋下徹・大阪市長と幹事長の松井一郎・大阪府知事が安倍晋三首相らと面会し、普天間飛行場に配備された米軍のオスプレイ訓練の一部を、地元・大阪の八尾空港で受け入れる考えを伝え[記事全文]
19世紀末の「眠れる獅子」が近代化に目ざめて約100年。「巨大な竜」に成長した中国の首脳が、20世紀を制した米国とひざ詰めで世界を語りあう。7、8日に米カリフォルニアで[記事全文]
日本維新の会共同代表の橋下徹・大阪市長と幹事長の松井一郎・大阪府知事が安倍晋三首相らと面会し、普天間飛行場に配備された米軍のオスプレイ訓練の一部を、地元・大阪の八尾空港で受け入れる考えを伝えた。
もし自分の家の近くでオスプレイの訓練が行われたら。まずはそれを考えることが、沖縄の負担をわかちあう第一歩になる。今回の提案は改めてそのことを私たちに問いかけている。
沖縄には米軍基地の74%が集中する。住民は日米安保条約のもと、危険や騒音と隣り合わせの暮らしを押しつけられてきた。住宅地に隣接する普天間飛行場の移転も進まない。
「本土は沖縄を差別している」。そんな不信の声が高まるなかでの提案で、基地負担の分かち合いは不可欠である。ただ、やぶから棒に八尾空港が持ち出され、唐突感が強い。
沖縄の反応も複雑だ。橋下氏は沖縄の米軍司令官に「風俗業活用」を進言し、地元でも米側からも批判を浴びた。今回の提案も参議院選をにらんだ失地回復ねらいとの冷めた目もある。
橋下氏は沖縄の負担を皆で考えるべきで、自分のところだけの安全性を言ってはダメだと強調する。その通りだが、普天間飛行場の移転先に関西空港をと言って立ち消えになるなど、基地問題への対応で一貫性を欠いてきたのは橋下氏自身である。
橋下氏は実現可能性の検討を政府に求め、菅官房長官は「検討する」と応じた。だが維新は地元に相談せず構想を掲げ、八尾市長は反発している。
オスプレイの訓練に沖縄が反対しているのは、海外で相次いで墜落するなど事故への懸念が残るからだ。八尾空港も住宅密集地にあり、どう受け入れを進めていくか。八尾空港を使うことがどこまで沖縄の負担軽減になるのかも、定かではない。いかにも準備不足の案だ。
昨年10月の配備に際し、沖縄県知事は「米軍が何でも持ち込めるというのは信じがたい」と抗議した。人口密集地や学校の上は避けるという日米間合意も、きちんと守られていない。
この実態を変えないままでは、八尾に限らず、訓練地域の住民を説得するのは困難だろう。政党の共同代表である橋下氏が本気ならば、与野党を説得し米国との交渉に持ち込むくらいの覚悟が必要だ。
検討を表明した政府も、沖縄の基地の県外移設と訓練の安全性の問題の両方を詰めていく責任がある。
そうでなければ言葉だけの提案、検討に過ぎない。
19世紀末の「眠れる獅子」が近代化に目ざめて約100年。「巨大な竜」に成長した中国の首脳が、20世紀を制した米国とひざ詰めで世界を語りあう。
7、8日に米カリフォルニアである米中会談は、両国の綱引きがアジア太平洋の行方を左右する時代を告げている。
異例ずくめの設定だ。習近平(シーチンピン)国家主席は就任から3カ月。多国間会合は別にして、初訪米までに3、4年をかけた江沢民、胡錦濤両氏にはなかった積極的な対米アプローチである。
前任者らの形式ばった外交と違い、オバマ大統領とノータイ半袖で保養地に1泊する。国際的な地位に自信をたくわえ、米国と屈託なく渡りあう指導者像を印象づけたいのだろう。
オバマ氏は08年の就任当初から対中外交を重んじ、「21世紀を形作る関係」と位置づけた。安保経済すべてを話し合う対話の枠組みを通じて、意思疎通のパイプを広げようとした。だが、やがて期待はしぼんだ。
中国は近隣との領土問題で強引なふるまいを続けたほか、北朝鮮寄りの姿勢をとってきたからだ。シリアなど人権問題でも米欧との対立の構図が続く。中国政府や軍の関与が疑われる対米サイバー攻撃も、いま深刻な不信の種となっている。
だが、ことし、オバマ政権は2期目に入り、中国指導部は世代交代した。今回の会談は、仕切り直しの好機をとらえたものだ。個別的な合意よりも、2人の個人的な信頼関係づくりに主眼が置かれている。
中国は米国と「新しい大国関係」をめざすという。両国は政治体制を支える思想がまるで違う。だから対立点はあるが、総合的な協力関係は見失うまい。冷戦期の米ソのような対立は避けられるとの考えだという。
グローバルな相互経済依存の時代、世界を二分できるはずもない。中国も運命をともにする地球号の一員として、責任ある大国になるかどうかに世界の目は注がれている。
新大国というならば、冷戦期のような米国との覇権争いではなく、周りのすべての国との平和的な共存発展を真摯(しんし)に約束する姿をみせるべきだ。海の航行の自由や貿易、紛争の解決などで国際ルールを守る意思と行動を示さねばならない。
一方、新たな思考が求められるのは日本も同じだ。安倍政権の「価値観外交」が「中国包囲網」をめざしているとすれば、構図はそれほど単純ではない。
米中が新秩序を探りあう21世紀の日本の立ち位置はどこか、創造的な外交戦略が必要だ。