ダーウィンが来た!生きもの新伝説トップへ
ダーウィンが来た!トップへ こんな番組です! 次回の放送 壁紙ギャラリー 取材ウラ日記
おすすめ自然番組 よくある質問 これまでの放送 おしらせ ご意見・情報窓口
取材ウラ日記
「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」のロケはディレクターとカメラマンの2人きり。耳寄りな情報があれば、砂漠やジャングル、極寒のツンドラ、世界中どこへでも出かけていきます。このコーナーでは、ディレクターの撮影裏話をのせていくことにしました。これを読むと、一味違った番組の楽しみ方ができるかもしれません。
この先はディレクターの個人的見解と誇大な表現が満載です。マユにツバをつけてお読みください。
岡山市・高島地区編 →取材の成果:第31回「幻の魚が用水路にいた!」
取材ウラ日記のバックナンバー
都会の側に生きる天然記念物アユモドキ
岡山市
岡山市
高島地区
高島地区
国の天然記念物に指定されているアユモドキ。
知る人ぞ知る淡水魚界のスター「幻の魚」です。

今回、アユモドキを撮影したのは、岡山県の県庁所在地、岡山市内にある高島地区。実際、私たち取材班は、岡山駅前のホテルに泊まり、毎朝車でわずか10分ほどの撮影現場に向かいました。人口67万人が暮らす大都市のすぐ側に、なぜ「幻の魚」アユモドキが棲んでいるのか?
番組では、その謎を解き明かしていきます。
日本一の淡水魚の宝庫
祇園用水
祇園用水
オヤニラミ
オヤニラミ
カマツカ
カマツカ
用水の魚
用水の魚
岡山淡水魚研究会の方の案内で、アユモドキが棲むという祇園用水(ぎおんようすい)を初めて見た時には、ビックリしました。幅4メートルほどしかない住宅街の中の用水路なのですが、上から見ても無数の魚が泳いでいるのです。

しかも、その種類も実に豊富で、30種類以上の淡水魚が確認されていると言います。祇園用水は、単位面積あたりの種類の多さでは、日本で一番淡水魚が豊かな場所だと言っていいと思います。大都市のすぐ近郊に、こんな場所があるとは驚きでした。

しかも、道路から水面を覗いているだけでも、天然記念物、アユモドキが泳いでいるのが確認できたのです。アユモドキは、美しい縞模様が目立つので、泳いでいればすぐに解ります。自然の流れの中を泳いでいるアユモドキが見られる場所は、日本でここだけでしょう。本当に貴重なところなんです。
アユモドキ
アユモドキ
アユモドキの子供
アユモドキの子供
石垣に隠れるアユモドキ
石垣に隠れるアユモドキ
江戸時代から続く祇園用水
旭川
旭川
美しい水草
美しい水草
古い石垣
古い石垣
野菜も洗える川市
野菜も洗える川市
アユモドキが棲んでいる祇園用水は、江戸時代に作られた農業用水です。
石垣の護岸が比較的残されていて、その石垣の隙間にアユモドキは暮らしているんです。用水路沿いの家は、焼き杉の塀が並び、水面には美しい緑の水草が流れに揺れています。日本人なら誰もが好きな風景の一つだと思います。

その用水路の水は、中国山脈から流れてくる旭川から引かれています。上流に大きな街がない旭川の水は、現在でも比較的きれいにたもたれています。用水路沿いの家には、家から直接水際に降りる階段がある家もあるんです。これは、地元では「川市」と呼ばれているそうです。

なんでも、昔ここで野菜などを売っていたからとのことでした。今も野菜など洗い物をする時に使う人がいます。大都会のすぐ側にこんな昔ながらの風景が残っているんです。
不思議な魚、アユモドキ
アユモドキは、非常に奇妙な分布域を持つ魚です。琵琶湖・淀川水系と岡山県の周辺という、2つの限られた地域にだけにしか分布していないんです。海に降りることがない純粋な淡水魚で、歴史的に見ても他の地域からの記録はありません。

なぜ、こんな奇妙な分布をしているのでしょうか?
実は、アユモドキは、日本では1種類しかいませんが、アジアに目を移すと中国からパキスタンまで20種類以上が知られています。アユモドキの故郷は、大陸なのです。
まだ日本と大陸が陸続きだった頃に入り込んできたアユモドキの祖先が、取り残されたと考えられています。アユモドキの奇妙な分布も、入り込んできたルートと関係しているのかもしれません。
昔は食べていたアユモドキ
数が減り、今から30年ほど前に天然記念物に指定されたアユモドキ。
でも、40年程前までは、田んぼの水抜きをする時にバケツいっぱい捕れるほど沢山いて、普通に食べていたそうです。昔は、田んぼのあぜ道に生える草などに産卵していたんです。60歳ぐらいの地元の方にお話を聞くと、非常に美味しかったとのこと。想像するに、ウナギとドジョウを足して2で割った様な味だったのではないかなあと思います。
休耕田がアユモドキのふるさと
水のない休耕田
水のない休耕田
水が入った休耕田
水が入った休耕田
水が入った休耕田全景
水が入った休耕田全景
休耕田に入ろうとするアユモドキ
休耕田に入ろうとするアユモドキ
祇園用水に棲むアユモドキの繁殖場所は、岡山淡水魚研究会が持ち主から借りている休耕田です。休耕田とは、今は稲作をやめている田んぼのこと。
普段は草ぼうぼうの荒れ地ですが、周囲の田んぼに水を入れる為に用水路が増水した時に水が入り、まるで湿原のようになります。水が入るとその日の内にアユモドキは休耕田に入り込んで産卵するんです。

アユモドキは、直前まで陸地だった草むらでしか産卵しない、ちょっと融通の利かない魚です。だから、現在のようにコンクリートで護岸され治水が行き届いた川では、産卵場所が無くなり、数が減ってしまったんです。
淡水魚の楽園の現実
保護宣言看板
保護宣言看板
用水路の掃除
用水路の掃除
吉井川
吉井川
瀬戸町の産卵場所
瀬戸町の産卵場所
祇園用水には、かつてスイゲンゼニタナゴという非常に珍しい魚がいました。でも今では、マニアや淡水魚業者に捕られて本当に「幻の魚」になってしまったそうです。
天然記念物のアユモドキは、捕獲すると罰せられるのですが、同じぐらい貴重な絶滅危惧種であっても天然記念物になっていないと罰せられないと言う法律の穴をかいくぐっての捕獲が今も行われているそうです。

私たちが撮影を行った休耕田がある賞田町内会はアユモドキの保護をきっかけとして、昔の美しい用水路を取り戻そうと「淡水魚保護宣言の街」として淡水魚の保護に努めています。
実際、撮影をしていても(水中の撮影なので道からは見えにくいんです)幾度と無く町内の人から「何をやっているんですか」と声をかけられました。
その度にNHKの撮影であることを説明して、「がんばって下さい」と声をかけていただきましたが「この用水路は自分たちが守るのだ」と言う町内の人々の意識が高いことを実感した次第です。

そして最近になって、旭川の東にある吉井川が流れる瀬戸町内の田んぼで、アユモドキが産卵している事が確認されました。
賞田の休耕田と違って、瀬戸町では人の目が行き届いていないので密漁が横行するといけないという配慮から、番組では取り上げられなかったのですが、おそらく日本で一番多くのアユモドキが生息、産卵しているのではないかと推測されています。
日本有数の淡水魚の宝庫、岡山。密漁の心配をする事なく、人が保護しなくてもたくさんの魚が泳ぐ時代が来ることを切に願います。
前の取材ウラ日記 取材ウラ日記のバックナンバー 次の取材ウラ日記へ
△このページのトップ
NHKオンライントップ NHKオンライン利用上のご注意NHKの個人情報保護についてNHK著作権保護
Copyright NHK (Japan Broadcasting Corporation) All rights reserved. 許可なく転載を禁じます。