このオープニングテーマは40人という異例の大編成オーケストラで録音された。「それが賑やかに聞こえる理由の一つかもしれない」と大友氏は言う。その背景にはNHKの恵まれた録音体制があるという。大友氏が続ける。
「予算も多いですが、それ以上に局内にスタジオを持っているのが大きい。民放のドラマの場合、いちいちスタジオを借りて録音しなければならないので、スタジオ代だけで膨大な額になってしまい、ときには音楽予算の半分を費やすこともあります。NHKではその分がすべてミュージシャンの人件費に回せるのです。とはいえ、ここまでやると人件費がかさんで、私の取り分はだいぶ減ってしまいましたが……(笑)」
あの名曲をもう一度
大友氏が作曲した劇中曲は、すでに約250曲にも及ぶ。通常のドラマよりかなり曲数が多い朝ドラでも、100曲程度というから、倍以上だ。しかもまだ録音は続けているという。曲数が増えるのは異常なほどの音楽へのこだわりがあるからだ。
「たとえばスナックで大吉(杉本哲太)が歌う映画『ゴーストバスターズ』のテーマ曲のカラオケは、このために新たに録音したものです。三陸の鄙びたスナックにあるカラオケだったらこんな音だろう、と場面に合わせてアレンジしているんです」
そして、後半の展開を解く鍵となる曲がクドカン作詞、大友良英作曲の劇中歌『潮騒のメモリー』だ。
この曲は'86年公開の架空のアイドル映画『潮騒のメモリー』の主題歌という設定で、劇中でキョンキョンがカラオケで歌って話題になった。その歌詞をクドカンは「5分くらいで書きました」という。聞いてみればそれもそのはずで、劇中にも登場する'80年前後のアイドル映画やアイドルソングの名フレーズをいいとこ取りして集めたものになっている。
その一部を紹介すると、「来てよ その火を飛び越えて」は、山口百恵の'75年の主演映画『潮騒』の台詞からきている。あるいは「波打ち際のマーメイド」は松田聖子の'82年の大ヒットナンバー『小麦色のマーメイド』から、そして「早生まれのマーメイド」はおそらく、2月4日生まれの小泉今日子を指している。また「さよならも言わずに 再び会うための約束もしないで」は、薬師丸ひろ子の『セーラー服と機関銃』('81年)の歌詞から。さらに、「私はギター」は高田みづえの『私はピアノ』('80年)から、そして『潮騒のメモリー』も同じく高田の『潮騒のメロディー』('79年)からとっていると考えられる。
出てきた名前のうち、山口百恵、松田聖子、薬師丸ひろ子といった面々は、ポスターや台詞のなか、あるいは出演という形ですでに劇中に登場している。まだ出ていないのは高田みづえだけ。「この先も驚きの配役がたくさんある」(尾美氏)というから、もしかしたら高田みづえの登場もありえる。この他にもチェッカーズ、斉藤由貴、南沙織などへのオマージュを思わせる部分もあり、期待は膨らむ。大友氏も言う。
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