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つくばセンター放射線測定結果

※原発事故を受け、放射線量の測定を実施してきましたが、放射線量の状況が落ち着いていることから、2013年3月15日(金)17時で測定を終了いたしました。

 福島第一原子力発電所の爆発事故による影響の有無について、産業技術総合研究所つくばセンター敷地内で放射線測定を実施したところ下記の結果が得られました。

 測定は、計測標準研究部門計測フロンティア研究部門および環境安全管理部が協力して実施しておりました。

 なお、産総研では放射性物質の漏出はありませんでした。

空気中の線量測定結果

<測定期間>2011年3月15日〜2013年3月15日

<測定場所>茨城県つくば市東1−1 産総研つくば中央第一事業所

<測定条件>

測定器  :シンチレーションカウンタTCS-171

測定結果 :測定値からバックグラウンド0.06(µSv/h)を差し引いた値


<測定結果>

全測定結果データのダウンロード(CSV形式)

※事情により一部データが欠落している部分があります。

 

<放射線測定結果グラフ>

 

測定結果グラフ

履歴:
 2011年3月15日から2012年3月16日「駐車場」にて手動測定
 2011年3月17日から「3階ベランダ」にて自動連続測定継続中

  • 「駐車場」の測定値と「3階ベランダ」の測定値の差は、地面からの距離、建物等の影響、風向き、機器の温度特性等が影響していると考えられます。
  •  
  • 「3階ベランダ」はこれまでバックグラウンドを測定していなかったため、「駐車場」と同じ0.06(μSv/h)をバックグラウンドと仮定しています。

放射線量の測定結果についての簡単な解説

図 日常生活で受ける放射線の量
図 日常生活で受ける放射線の量
(図中の数値は内閣府原子力安全委員会のパンフレットより)

現在つくばで測定されている数値は、健康に影響を与えるものではありません。

 ここで使っているのはマイクロシーベルト(µSv)という単位です。マイクロシーベルトとは、放射線量の単位で、放射線が体に吸収されて、体にどれぐらい影響を及ぼすのかを表す放射線の量のことです。

 人は、年間におよそ2400マイクロシーベルトの放射線を自然に受けています。胸のレントゲン撮影をすると50マイクロシーベルトの放射線を受けます。右の図はそれらをまとめたものです。

 産総研では、放射線の量を次のようにサンプリングして測定しています。

γ線の量を測る測定器(シンチレーションカウンタ)を用いて、測定地点におけるγ線の放射線の量を測定しています。その結果の時間ごとの推移を表にして掲載しています。(全測定結果)表には「µSv/h」という単位が使われています。これは1時間当たりの放射線量を表しています。

 このような放射線は、主に、大気中をただようガスやほこりなどに付着した放射性の核種から出てくる放射線です。産総研ではそれらの放射性核種についての測定も行っております。

放射性核種についての測定結果

 大気中をただようほこりなどに付着した放射性物質が出す放射線(γ線)のエネルギースペクトルを、 ゲルマニウム検出器という測定器を用いて測定しました。赤色は3月15日、緑色は3月19日に採取した物質が出す放射線のエネルギースペクトルです。青色はバックグランドと呼ばれもので、採取した試料を置かないで測定したスペクトルです。バックグランドのスペクトルには環境中に存在するK-40(放射性カリウム、人体には約0.01グラム、約3000ベクレル存在) の放射能が見えています。

 3月15日の測定結果では、ヨウ素、セシウム、キセノン、テルルといった物質が放射性の核種として検出されました。これらの核種は、一般の環境中には存在しないことから、福島第一原子力発電所の事故により放出されたことが推測されます。

 3月19日の測定結果を新たに掲載しました。この日は放射性ヨウ素などの放射性核種が減少したため、自然界に存在するK-40(放射性カリウム)、Pb-214(放射性鉛), Bi-214(放射性ビスマス)からの放射線が目立って観測されました。

図
図 ビニールシート上に降下してきたほこりなどを採取した試料から放出された放射線のエネルギースペクトル。
赤:2011年3月15日に採取した試料からのスペクトル
緑:2011年3月19日に採取した試料からのスペクトル
青:試料を置かないで測定したスペクトル


 最も多く検出された核種はI-131(ヨウ素131)で約8日で半分に減ります。またTe-132(テルル132)は、3.2日でI-132(ヨウ素132)に変わります。 I-132はわずか2.3時間で減少します。ですから放出が止まれば放射線量は約1週間で半分になります。1か月たてば約30分の1程度になります。この他Cs-134(セシウム134)は半減期2.1年、 Cs-137(セシウム137)は半減期30年で残留しますが、それらの放射能は全体から比べればわずかです。


※産総研つくばセンターにて実施してきました放射性核種の測定は2011年4月8日をもって終了といたしました。これは、つくばセンターでの放射線量測定の結果が漸減傾向を示していること、また、放射性核種がほとんど検出されない日が一週間以上続いたことによるものです。

表 検出された核種の放射能
核種名Te-132I-131I-132I-133Cs-134Cs-137
半減期3.2日8.0日2.3時間21時間2.1年30年
日付放射能 (Bq)
3月15日 9:20〜10:2024124381644
3月15日 13:20〜14:20183518432
3月16日 13:20〜14:208237122
3月17日 13:20〜14:20261000
3月18日 13:20〜14:20010000
3月19日 13:20〜14:20120000
3月20日 13:20〜14:204516036
3月21日 雨天のため本日のデータはありません
3月22日 16:15〜17:15794001
3月23日 12:20〜13:20151001
3月24日 13:20〜14:20141000
3月25日 13:20〜14:20040001
3月26日 13:20〜14:20191001
3月27日 13:20〜14:20010000
3月28日 13:20〜14:20010000
3月29日 13:20〜14:20010000
3月30日 13:20〜14:201500813
3月31日 13:20〜14:20010000
4月1日 13:20〜14:20010000
4月2日 13:20〜14:20010000
4月3日 13:20〜14:20000000
4月4日 13:20〜14:20010000
4月5日 13:20〜14:20000000
4月6日 13:20〜14:20000000
4月7日 13:20〜14:20000001
4月8日 13:20〜14:20020012
         (注)試料採取の条件により若干数値の変動があります。          
            2011年3月22日、23日のデータは降雨を避けるためにサンプリング時間が変わっています。

検出された放射能の推移
検出された放射能の推移


 この放射能は、産総研敷地内の平地に 1 m×1.5 m のビニールシートを敷き、 1時間に付着したほこりを拭き取った試料の放射能を、ゲルマニウム検出器で測定したものです。

 ゲルマニウム半導体検出器(下写真)は、X線やγ線のエネルギーを測定する検出器です。放射線を検出する部分は、ゲルマニウムという物質からできている半導体です。この半導体に放射線が入ると、パルス的に電流が生じます。放射線のエネルギーが大きいほど、大きいパルス的な電流になります。このパルス的な電流の大きさを測定するとエネルギースペクトルが得られます。

図 日常生活で受ける放射線の量
産総研の高純度ゲルマニウム半導体検出器とその計測システム

 

 

【用語説明】

※ベクレル(放射能の単位)

 放射能とは放射線を出す能力です。このような能力のある物質のことを放射性物質といいます。放射能は単位時間当たりの放射性壊変の数と定義され、その単位にはベクレル(Bq)が用いられています。 BqをSI単位系の基本単位で表わすとs-1です。例えば、100 Bqであれば、1秒間に100個の原子核が崩壊し放射線を放出していることを表します。