もう手遅れか? 児ポ法改“悪”阻止のためにできることとは?<学習編>
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■さらに「表現の自由」を深く知るなら
「表現の自由」の問題をもっと知ろうとするなら、読むべき本はたくさんある。
まず、個々の問題に触れる前の社会全体がどうなっているかを知るために読んでおきたいのが、米澤嘉博『戦後エロマンガ史』(青林工藝舎)だ。この一冊で、何かと規制される対象であるエロマンガが、どのような過程を経て発展していったかは総覧できる。この本で触れていない時代については、永山薫『エロマンガ・スタディーズ―「快楽装置」としての漫画入門』(イーストプレス)を読めば補完が可能だ。さらに、オタクの黎明期を知ることができる霜月たかなか『コミックマーケット創世記』(朝日新書)も欠かせない。そして、オタクを生み出した日本の戦後社会について知るために、上野千鶴子・北田暁大ほか編『戦後日本スタディーズ3』(紀伊國屋書店)も押さえておきたい。また、そもそもオタク文化が批判されるものではなく歴史の必然だったことは、ボードリヤール『消費社会の神話と構造』(紀伊國屋書店)を読めば、だいたいわかる。ボードリヤールまで読む気力がある人なら吉見俊哉『メディア文化論 メディアを学ぶ人のための15話』(有斐閣アルマ)も読んでおくとよいだろう。
何かと規制の対象とされる漫画・アニメ・ゲームなどを、次世代の日本を担う産業として欠かせないと考えるならば、そうした本も読んでおきたい。まずは、漫画を産業として分析した中野晴行『マンガ産業論』(筑摩書房)が読みやすい。出口弘・田中秀幸・小山友介編『コンテンツ産業論―混淆と伝播の日本型モデル』(東京大学出版会)は、出版元のせいで難しそうな本に見えるが、章立てが細かく分かれているので読みやすいところだけでも読んでおきたい。何がどうなって儲かっているのかが、よくわかるはずだ。
過去に起こった事件を知っておくために押さえておきたいのは、まず『どこか<問題化>される若者たち』(恒星社厚生閣)所収の、松谷創一郎「<オタク問題>の四半世紀 <オタク>はどのように<問題視>されてきたのか」だ。これを読むと、オタクが社会からどういう目で見られてきたのかが理解できる。もうひとつ、史上初めてエロ漫画のワイセツ性をめぐって争われた松文館裁判を追った長岡義幸『「わいせつコミック」裁判―松文館事件の全貌!』『発禁処分―「わいせつコミック」裁判・高裁篇 』(道出版)も押さえておきたい。
海外の事例を知るにはジュディス・レヴィアン『青少年に有害! 子どもの「性」に怯える社会』(河出書房新社)を読んでおくと、「子どもを守る」をお題目に規制や監視の目が厳しくなると、とんでもないことになるのが理解できるだろう。
規制を進める側の論理のひとつを知るのに読みやすいのが、中里見博『ポルノグラフィと性暴力 新たな法規制を求めて』(明石書店)だ。この本、後半でポルノ規制を求める運動の歴史が書かれているので、規制する側の論理の形成過程を知ることもできるのだ。
このように「表現の自由」の問題に興味を持ち、青少年条例や児童ポルノ法問題などで
「どうすればよいのか」と憤った時に読んでおくべき本は意外と多く、図書館に入っている本も多い。身近な図書館になくても問題ない。公共図書館で「○○図書館にある本を読みたい」と申し出れば、図書館同士で連絡を取って取り寄せてくれる。まあ、すべてを揃えても5万円もかからないはずだ。毎月の趣味に使うお金をちょっとずつ削って、買いそろえるのもよいかも。
ネットで「どうしよう!」「大変だ!」と騒ぐよりは、こうした情報を共有してもらいたいものだ。
(文=昼間たかし/文中敬称略)
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