「マリファナ青春旅行」麻枝（まえだ）光一的日常

４月２９日から５月６日まで、ある友好団体の一員として北朝鮮を訪問した。
　（日本の地方空港のようにがらんとした平壌空港）





◎朝鮮労働新聞の論文記事がきっかけで


　（労働新聞）

今回の僕の訪朝の目的は「大麻」である。大麻は日本のマスコミで、薬物汚染の元凶のように言われている。在日朝総聨による事前審査でも、この１５年ほど大麻に関わってきた僕の北朝鮮入国には消極的だったそうだ。こんな大麻だが、北朝鮮ではどのように受け止められているのだろうか？
今回の訪朝のきっかけは、２００４年７月２３日付の政府機関紙「労働新聞」だ。それには「魅力ある作物」というタイトルで、金正日総書記が、「大麻には食糧、燃料、建材、医薬品、石鹸、塗料などの原料として幅広い利用価値がある。大麻ほど役にたつ植物はほかにない」と断言し、「党を挙げて栽培し利用を進めよ」と書かれていた。それは僕がアメリカ人大麻研究者ジャック・ヘラーの著書に影響を受けて、日本で主張してきたことでもあった。労働新聞に書かれているということは、国家としての政策だといえる。しかし、その記事から６年が経過しても、北朝鮮で大麻がどのように利用されているかについての情報はまったく入ってこなかった。
大麻が日本で麻薬のような扱いを受けるようになったのは、戦後日本を占領したアメリカ軍（ＧＨＱ）が大麻規制を日本に押しつけてからのことで、それまでは、畑のあぜや家の裏に植えられ、繊維、油、食糧、紙などとして生活のなかで利用されてきた。
戦後、アメリカが西側世界の警察として、日本やヨーロッパ諸国の大麻を規制し弾圧したが、東側の中国、北朝鮮、東欧では栽培され続けた。
自国に昔からある植物資源を活用できるということは、自主・自立を唱え、しかも外貨が不足している北朝鮮にとっては非常に好都合だ。北朝鮮の土地はやせているが、大麻はやせた土地でも育ち、ほとんど肥料がいらない。山の斜面や川岸の利用しにくい土地に植えると、半年で４メートルにも育つ。シベリヤのような酷寒の土地でも育つ。金総書記が力を入れるのも当然だ。
大麻には様々な利用方法があるが、僕は今回の訪朝では大麻の食糧としての可能性を優先させることにした。北朝鮮では１９９０年代に食糧不足で餓死者がでており、その後も事情は好転していないと伝えられているからだ。

◎食糧としての大麻

　（食糧研究所所長の金氏ら）
食糧の専門家として、国家科学院軽工業科学分院食糧研究所所長の金正男氏、研究士博士金泰圭氏、穀物加工研究所の洪利石氏と面談することができた。
洪氏によると、大麻から油を搾って分析したところ、カンナビノールが検出され、その後、行き詰っているということだった。僕がカンナビノールには毒性がなく、大麻の種や油は日本や欧米で食糧として流通していることを説明すると意外そうだった。カンナビノールは大麻の精神活性物質のひとつだが、微量でも有害だというのは今では情報としては古い。
大麻の種にはほかの穀物と違って大量のたんぱく質が含まれるほか、必須脂肪酸、ミネラルも豊富だ。しかし、北朝鮮では大麻の食糧の可能性についてはあまり研究されているとは思えなかった。インターネットへのアクセスが制限されていて、海外の最新情報が入手しにくいのだろう。
北朝鮮では溶媒のへキサンが入手困難なため、植物油はすべて物理的に力を加える圧搾抽出法で搾っており、ゴマ油も同様ということだ。この方法で搾られた油は栄養価的にはすぐれているが、手間がかかるので、先進諸国では高級自然食品として販売されている。しかし北朝鮮には安い労働力があふれており、大麻の油も従来の方法で搾れば新たな設備の必要はない。大麻の食品のレシピをいくつか紹介し、大麻ミルクを作って子供に飲ませると理想的栄養食になるという話をすると、すぐに研究を始めると３人とも目を輝かせた。一言でいうと「情報不足」なのだ。大麻の食糧化は情報さえあれば、比較的はやく実現しそうだ。

◎燃料としての大麻
(左　黄氏　　右　団長吉田康彦氏）
小泉元首相訪朝の公式通訳で対外文化連絡協会日本担当局長でもある黄虎男氏は、大麻の油の軽油化に強い関心を示した。１０年ほど前、日本で大麻油を軽油化して北海道から九州までバスを走らせたことを話すと、身を乗りだして興味を示した。北朝鮮は燃料不足で農業機械を動かせず、それが食糧不足の原因のひとつになっている。農業機械はほとんどがディーゼルエンジンで、軽油で動かせる。北朝鮮は停電が多いが、小規模なディーゼル発電ができれば助かる。問題は厳しい経済制裁により簡単な設備ですら輸入困難になっていることと、資金だ。

◎肥料としての大麻
平壌郊外の宅庵共同農場を視察した。２５００人余りの村で規模としては平均的だという。昨年、肥料を１万１０００トン使ったが、そのうち石油化学肥料を加えて窒素、リン酸、カリを強化したものが２０００トンで、今後増やしていくということだった。
日本で大麻の油を搾ったカスを分析したところ、窒素、リン酸、カリが基準を超えており、肥料証明書をもらった。北朝鮮で自然肥料として何を使ってるのか不明だが、大麻を搾ったあとのカスを利用すれば化学肥料に出費する必要はなくなる。大麻の葉は翌年の肥料となって土地を肥やすこともできる。
燃料と肥料は農業生産に欠かすことができない。それらが大麻とその副産物からできるのだから、北朝鮮のような貧しい国にとって、大麻は文字通り国家を救う可能性のある作物だといえる。
大麻からできる製品には、民生用の生活必需物資が多いのも特徴である。

◎総合的研究が必要
大麻は応用範囲が広いので、専門分野が協力し、情報交換する必要がある。例えば、酸化して食糧に向かなくなった油は燃料に使えるし、油を搾ったあとのカスは肥料や食用の粉としても使える。茎は紙の原料にもなり、エタノールや燃料にもなる。大麻はもともとただの雑草に近い植物だが、さらに生産コストを下げ、最大限に有効活用するためには総合的な研究所を設立する必要がある。韓国のある大学では大麻学科を設置して専門的に研究しているし、中国では、数年前、軍部が分厚い報告書をまとめている。
黄氏は「国家的プロジェクトとして取り組みたい」と言っていたが、それは金総書記の考えでもある。
僕としては北朝鮮で大麻がどの程度の規模で栽培され、どのように利用されているかについてもっと詳しく知りたい。

◎次回訪朝にむけて
大麻は末期癌の疼痛や慢性痛、緑内障、喘息、偏頭痛、自己免疫による難病、睡眠障害、食欲障害、うつ病などに効果があることが、国連WHOやアメリカ保健省の研究で明らかになり、欧米では実際に利用がすすんでいる。北朝鮮には薬品や病院の不足で困っている人たちが多いと思われる。
次回は大麻が医薬品として利用されるよう、欧米や日本の研究書を持参したいと思う。医療高価の高いカンナビノールの濃度が高いジャック・ヘラーなどの品種が平壌で愛されるのも、そう遠い未来ではないだろう。
　（最高人民会議常任委員会副議長の洪善玉氏。日本だと総理大臣レベル。いつもニコニコしているが、同行の朝日新聞関係者がくだらないことを言ったときは一喝した）
洪氏（女性７０歳）と食卓を囲みながら面談したとき、僕が「人民第一」というと、彼女は手をのばし握手を求めてきた。
日本には北朝鮮の体制を批判するあまり、経済制裁により民衆が苦しんでいることに思いがいたらない人が多い。僕にはそこに住む人たちが飢えと病気に苦しむ現実のほうが気にかかる。大麻はそもそも民生目的に適した植物である。北朝鮮の人民を第一に考える優れた指導者に働きかけていきたい。
今回の僕の訪朝目的は大麻であり、最高人民会議副議長のような政府高官に会っても大麻について話し、大麻のことしか話さなかったのである。現実的な成果につながるまでかかわっていきたい。そしていつか金総書記と会えるなら、やはり大麻について語り合いたい。大麻の煙でもくゆらせながら・・・


　（５月６日、僕は平壌で還暦(６０歳の誕生日）を迎えた。黄氏がランの花束をくれた。高いのに無理してくれたんだなと思うと嬉しかった。）



　（外国人は外国人価格を適用されるが、それでも驚くほど安い。「神仙炉」は神様や仙人が食べるといわれている鍋だが、韓国でも高くて食べられなかったが初めて食べることができた。２０００日本円。参鶏湯なども本格的）


　(犬肉のコース　犬のカルビ肉）






　（犬のレバー。ほかにも３品ほどでてすべておいしかった。韓国で食べたことがあるが、ピョンヤンのほうがはるかにおいしかった。ほかにスッポンなども食べ、帰ってきたときにはすごく元気になっているのに気がついた。）


（このぐらいの美人ならいくらでもいる。南男北女といわれ、北には美人が多い。）



　(マクドナルドそっくりのハンバーガーショップ。１個２００円。月給５０００円程度の北の人たちだが食べる人がいるのか？と思っていたら、何人かお客さんが来た。不思議）